続く余震「車中泊」の悲劇どう対応? 熊本地震の教訓「7つの備え」(下)
【5】アウトドア・レジャーのすすめ
私が車中泊をした南阿蘇村の道の駅「あそ望の郷(あそぼうのさと)くぎの」では、アウトドア用品メーカー「モンベル」が被災者に無料でテントや寝袋を貸し出していました。 阿蘇山を背にした緑の丘に、黄色や青、オレンジなど色とりどりのテント約40張りが並ぶ光景は一見、キャンプ場のようにのどか。しかし、テントの中では「小さな子がいて避難所に居づらい」「足を伸ばしたかった」という人たちが身を寄せあっていました。山間部とはいえ若い親子はさすがにテント暮らしには慣れていない様子でしたが、精神衛生やエコノミークラス症候群の予防には抜群の効果があったでしょう。 同社は阪神・淡路大震災以来、災害時には「アウトドア義援隊」というボランティア集団を組織して、こうした支援を展開しています。今回はちょうど1年前、道の駅の敷地内にオープンした南阿蘇店が被災地の拠点となりました。店内は停電していましたが、懐中電灯やメモを使って商品の手売りにも対応。私も飛行機では持ち込めなかったキャンプ用ガスバーナーのカートリッジ缶を購入できました。 同様のテントは登山家の野口健さんも全国から集まった100張り以上を益城町に設営し、注目されています。アウトドアの経験は災害時に必ず役立つという観点から、「サバイバルキャンプ」を企画する防災NPOもあるほどです。特に都市部のファミリーこそ、普段からアウトドアやキャンプに親しんでおくべきだと実感しました。
【6】防“犯”力から防災力も強化
今回はどこへ行っても「空き巣が心配」「若い女性が襲われたらしい」「県外ナンバーには注意」といった声を聞かされました。実際に空き巣犯が逮捕された例もありましたが、SNSでさまざまな情報が拡散されたこともあってか、住民の疑心暗鬼やピリピリした雰囲気は、私がこれまでの被災地で感じた以上のものがありました。 被災の苦しさに追い打ちをかける犯罪者には憤りしかありません。被災地での空き巣は、住宅が壊れて無防備になり、避難によって地域の防犯力が低下したところにつけ込みます。これには対策しようがないのでしょうか。 備え・防災アドバイザーの高荷智也さんは「普段も災害時も、基本は戸締まり」だとして、「避難時に窓やドアなどの戸締まりを確実に行う」「外から見えるところに貴重品を出しっぱなしにしておかない」の2点を助言します(※ただし、津波や火災などの二次災害が迫っている場合は避難を最優先)。 また、平時の防犯対策である「二重ロック化」や「外回りの整理」「窓ガラスに防犯フィルムを貼る」といった準備は非常時にも有効で、特に防犯フィルムは地震によるガラスの飛散防止にもなるため、大変有効な対策だとします。 そして地域全体としても、すみやかに自警団を組織して地域の巡回や不審者に対する声掛けを行うなど、普段から「防犯力」があれば、いざというとき有効に働くでしょう。一方で「外国人は怪しい」などと過剰な偏見を持つのはいけません。そうした見極めやバランス感覚も、普段から外国人と共生する地域活動などをしていけば養えるでしょう。 これまで「防犯」と「防災」は似て非なる活動に見られがちでしたが、これからはより密接に捉え、共通の対策を立てることができるかもしれません。