輝かしい未来のために苦渋の一年目をベースにできるか
声高に監督解任を叫ぶのは個人の勝手だが、メリット・デメリットを十分に考慮しなければならない。
2月25日のリーグカップ決勝後、チェルシーのマウリシオ・ポチェッティーノ監督はそそくさと貴賓席から降りていった。オーナーのトッド・ベーリーとは視線すら合わさず、完全に無視していたようにも映った。
気が付かなったはずはない。ベーリー以外の人間とは挨拶したり、ハグしたりしていた。ふたりの関係はぎくしゃくしているようだ。
さて、ベーリーはみずからの哲学を絶対に曲げないトマス・トゥヘルを解雇し、比較的おとなしいといわれるグレアム・ポッターを後釜に据えた。それでもチーム事情は改善せず、監督として失敗続きのフランク・ランパードを暫定的に起用。昨シーズンは12位に沈んでいる。
捲土重来を期した今シーズンは、サウサンプトンやトッテナム、パリ・サンジェルマンなどで一定の成績を残したポチェッティーノを新監督に迎え、チャンピオンズリーグ出場権奪還を最大目標に掲げていた。
26試合を消化した時点で、4位アストンヴィラとは17ポイント差の11位。本来、あるべき立ち位置に戻るのはもはや不可能に近い。
不振の最大要因はけが人続出に尽きる。一時は14人もの選手が戦線を離脱した。現時点でもクリストファー・エンクンク、リース・ジェイムズ、ウェズレイ・フォファナ、ベノワ・バディアシル、カーニー・チュクウェメカ、ロメオ・ラヴィア、レズリー・ウゴチュクの7選手は、週末のブレントフォード戦に間に合いそうもない。
また、当コラムや解説などで何度も繰り返し指摘しているように、年齢的バランスが悪いため、窮地に立たされるとパニックに陥る。
この、絶望的なアンバランスを招いたのがボーリーである。基本軸を若手の才能に置きすぎた。スピードやテクニックに長けていても、経験不足は否めない。
先行されたり、1点差に追いつかれたりするだけで慌てふためく。大ベテランのチアゴ・シウバが後方から指示を送っても、崩れたリズムは取り戻せない。