羊文学という「庭」を守る「庭師」たちの企画展。haru.を核にクリエイター陣が世界観を拡張
自由に表現を模索し続けていけることを願って
小屋のなかでいっそうの存在感を放つのは、”Addiction”と”honestly”からつくられた「おばけ」。”honestly”の<透明に変わって この部屋で一人でいたいの>という歌詞から連想したという。キャプションには「たとえ自分を見失って(おばけになって)も、鏡と対峙し、まだ見ぬ自分を想像(創造)し続ける姿を表現できたらと思いました」と説明されていた。 楽曲を再解釈してつくられた制作物のなかには、購入して、家に持ち帰ることができるものもあった。 例えば、”FOOL”からつくられたマッチボックス。haru.は、歌詞から「強い決意を感じる」として、「会場内で何かを燃やしたいくらいだったのですがそれは難しいので、大きなマッチボックスをつくりました」とキャプションにて説明している。破壊と創造、浄化と再生などの意味を込めているのだという。 これまで記事内でも引用してきたキャプションは、はじめに来場者へ「手紙」として渡される。「庭師」であるクリエイターがどう解釈し、どう表現しようとしたかが記されるとともに、「庭を歩く際の道しるべになれば嬉しいです」というメッセージが添えられていた。 haru.は展示について、「はじめは、すでにアルバムとして完成しているものを展示してもいいのか? という葛藤がありました。けれど、空間で再構築して、違うものとして見せることはできるのではないか、と」と振り返り、「一つずつ、つくられた過程を感じとれる場所になればいいなと思っています」と話していた。 haru.は手紙のなかで、ステートメントの最後にこう綴った。 「さまざまな可能性を秘めている羊文学が、そしてメンバーの一人ひとりが、自由に表現を模索し続けていけることを願って」
テキスト・撮影 by 今川彩香