羊文学という「庭」を守る「庭師」たちの企画展。haru.を核にクリエイター陣が世界観を拡張
楽曲を再解釈してつくられた展示物があちこちに
植木から生えてきたかのように、楽曲を再解釈して制作されたモニュメントが顔を出していた。 切り株や植物が絡まっているスマートフォンから、”Hug.m4a”が繰り返し再生される。塩塚が、友人から聞いたある出来事をきっかけにふと歌ってみたというこの曲は、スマートフォンで録音されたものだという。 このように、空間のあちこちに『12 hugs (like butterflies)』の各楽曲をイメージした展示物が散りばめられていた。また耳をすませば、”Hug.m4a”だけでなく、ほかの楽曲や、haru.と羊文学が展示や衣装などについて語る対談も聞こえてきた。 庭の中心にある白い小屋。その扉は、”GO!!!”を再解釈したものだ。haru.が塩塚との対話から、かたちも大きさもさまざまな取っ手がついた扉を想像したのだという。また、小屋の壁面も一枚の壁ではなく、複数の扉をつなげて構築されている。
情熱を表現した「赤」が広がるジャケット衣装
小屋のなかには、『12 hugs (like butterflies)』のアルバムジャケットがつくられる過程の資料も展示されていた。通常盤のジャケットでは、塩塚が自らを抱きしめるような素振りをしている。 『若者たちへ』(2018)、『our hope』(2022)に続いてアートワークを手がけたharu.が振り返る。「『12 hugs (like butterflies)』のジャケットについては、羊文学から『女性が素肌でハグしているような感じ』という具体的なイメージがありました」「羊文学の注目度が上がるにつれて、大衆からビジュアルについて言及されるシーンも増えたように感じていて。素肌ということで、受け取る側へ、意図しない方向の解釈を与えたくなかった。だから素肌っぽくあることを意識しながら、ビーズを散りばめた衣装を台湾のアーティストに依頼したんです」 塩塚が着用した白い衣装も、河西が着用した黒い衣装も、心臓の位置に赤いビーズが散りばめられている。 「心臓に位置する赤は、情熱を表しています。モエカさんが着た白い衣装には、その情熱がじわじわと広がるように赤いビーズが全体に混ざっている。また、ビーズのように小さなカケラが集まって、音楽をはじめとした羊文学の世界がつくられている、そういったイメージも込められています」とharu.。「(羊文学とクリエイティブチームは)お互いがつくり合うことで、守り合っているような感覚があるんです」とも話した。