人気が高まるデカフェコーヒー、本当に健康にいいのか比べてみた、糖尿病などへの効果は?
カフェインの長所と短所
一方で、デカフェと通常のコーヒーの効果には多少の違いもある。ただし、研究によって見つかった効果の差が、デカフェに含まれるカフェインが少ないからなのか、カフェインを除去する過程でコーヒーに生じた変化によるものなのか、それともデカフェを飲む人が少ないせいなのかを見分けることは困難だ。 2022年に医学誌「European Journal of Preventive Cardiology」に掲載された研究では、参加者44万9563人の健康状態を12年半にわたって追跡し、コーヒーを飲む人と飲まない人の心血管疾患の発生率を調べている。その結果、デカフェでも通常のコーヒーでも、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べて心血管疾患および死亡のリスクが小さかった。 研究者が発見した一つの大きな違いは、デカフェコーヒーは不整脈の減少とは関連がなかったことだ。これは、カフェインには「アデノシン受容体」をブロックして心臓のリズムを安定させる効果があるからかもしれないと、論文の責任著者であるオーストラリア、アルフレッド病院ベーカー心臓・糖尿病研究所の心臓専門医ピーター・キスラー氏は言う。 こうした研究結果を受けて、米国心臓協会と米国心臓病学会は2022年、通常の量のカフェインと心房細動(不整脈の一つ)のリスクには関連が見られないとし、心房細動の患者にカフェインの摂取を控えさせる指導は有益ではないとの勧告を出している。 カフェインはまた、片頭痛の軽減にも役立つ。2019年に医学誌「The American Journal of Medicine」に発表された研究によると、反復性の片頭痛が起こる人は、カフェインの摂取によってその頻度が減るという。また、カフェインが片頭痛治療薬の効果を補強することも、研究によって示唆されている。一方で、人によってはカフェインで頭痛が引き起こされたり、悪化したりする場合もある。 とはいえ、カフェインをただ多く取ればいいというわけではないと、オーストリア、ウィーン大学の栄養学研究者イナ・ベルクハイム氏は言う。「コーヒーの効能の理由がカフェインだけにあるのだとすれば、(カフェイン入りの)ソフトドリンクからも同じような効果が得られるはずです」 現在、米食品医薬品局(FDA)はカフェインの摂取量を1日400ミリグラム以下にするよう推奨している。200ミリリットルのコーヒー(抽出液)に含まれるカフェインは約120ミリグラムだ。カフェインの影響は人によって異なり、中には非常に敏感な人もいる。 カフェインを取りすぎると、短期的にはイライラや睡眠障害、胃腸の不快感、頭痛、心拍数の増加などを引き起こすことがある。また長期的には、摂取をやめようとした場合に、頭痛などの離脱症状(禁断症状)が現れる可能性がある。