政権発足からわずか2週間で1247人が殺人の犠牲に、メキシコ初の女性大統領に立ちはだかる「治安の危機」
今月1日にメキシコ初の女性大統領として就任したシェインバウム氏。その手腕に期待される課題の1つが、治安対策だ。同氏が大統領に就任してわずか2週間の間に、同国では2人の市長を含む1247人が殺人事件の犠牲となったことが調査会社の調べで分かった。 今月10日、白い服をまとった数百人の市民が、メキシコ・チルパンシンゴの街を行進し、暴力追放を訴えた。 同市では今月6日、6日前に就任したばかりの新市長が惨殺されるという事件が発生した。住民はもううんざりだと話す。 デモ参加者の男性は、暴力によって町の活気が失われていると述べた。「市民が毎日直面している現実を生きるだけで、なぜこの街が7時に人がいなくなり、荒涼として暗く、生気がないように見えるのかがわかると思う」 暴力が発生しているのは、この町だけではない。シナロア州の州都では麻薬カルテルの派閥間抗争が続いており、230人以上が死亡した。 南部チアパス州ではメキシコのシェインバウム大統領が就任したその日に、軍の兵士が移民6人を殺害する事件が発生。国防省は、兵士らが移民の車両を犯罪組織の車両と間違えたと発表した。 そして今月15日、南部オアハカ州カンデラリア・ロシチャの市長が、自宅で刺殺されるという事件が発生した。「突然のことで、なぜこんなことが起きたのか分からない」と住民の男性は語った。「みんなのことを助けて、街の修繕に努めた市長だった」 シェインバウム政権発足後、最初の2週間でこれら2人の市長を含む1247人が殺人事件の犠牲者となった。これは調査会社が、公式統計を基に分析したもの。 メキシコは、麻薬カルテルなどによる暴力の蔓延に10年以上苦しんでおり、シェインバウム氏が対処できるかどうか疑問視する声は多い。 シェインバウム氏はロペス・オブラドール前政権がとった社会的アプローチを取り入れつつ、情報共有の改善、関係機関の連携強化、そして国家警備隊の増強を図るとしている。 メキシコ シェインバウム大統領 「私たちは重大犯罪の件数を減らす。私たちは戦略を持っており、それを実行する。特定の問題に対して、前大統領が示した以上の注意を払うつもりだ。安全と平和は正義の結果であると信じている」 一部からは、ロペス・オブラドール前大統領の消極的な対応が、カルテルの強化と拡大を許したと批判する声が上がっている。前大統領の6年間の在任中に、約20万人が殺人の犠牲となった。これは平均して15分に1件の割合であり、調査会社によると近年のどの政権よりも多かったという。