春を呼ぶ信州「中野ひな市」31日開幕へファンの熱気 プレイベントも
長野県中野市で伝統の土びなを展示即売する「中野ひな市」は3月31日から2日間、全国のファンを集めて開かれます。プレイベントとして「まちかど土びな展」や「ひな市特別展」を開催中。まちかど展は、市内の商店などが持っている土びなをショーウインドーや店頭に飾り、人形を見ながら町の散策を楽しんでもらう狙い。特別展には貴重な収集作品多数も展示、ひな市の抽選会に向けて熱気が高まろうとしています。 【写真】高さ6メートル、圧巻の1000体「ひな人形」 長野県の博物館
●まちかど展
今年で14回目のまちかど土びな展は3月14日からひな市2日目最終日の4月1日まで開催。今年は市街地の商店73店が参加し、それぞれ自慢の色彩豊かな土びなを展示しています。地元では案内のパンフレットを用意したりスタンプラリーなどのサービスも。 31日からの中野ひな市は、江戸初期から開かれていた定期市で1804年以降の文化年間にひな人形が売られたことから始まったともいわれています。中野の土びなは店頭販売されず、ひな市で抽選販売されるため全国からファンが集まって熱気に包まれます。 中野の土びなは2つの流れがあり、「中野人形」の奈良家は初代・奈良栄吉が京都を訪れた際、伏見の土人形に引かれて人形の型を譲り受けた上、職人も中野に招いて制作を開始。この間、伏見から数十回にわたり100数十個の人形を持ち帰ったとされます。戦時中に材料の入手困難で制作が中断したこともありますが、昭和30年代に再開しました。 もう一つの「立ケ花(たてがはな)人形」の西原家は、初代・西原己之作が瓦製造に携わっていた折、三河の鬼瓦職人の勧めで冬の副業として土人形を作り、多くの歌舞伎人形の型の提供も受けたとされます。洪水による型の流失などで中断もありましたが昭和40年代に復活。歌舞伎人形を中心に代々制作を続けています。
●特別展
3月19日から4月1日まで市内の中野陣屋・県庁記念館で開いている「ひな市特別展」には、収集家が集めた奈良家、西原家の代表作や岐阜県、宮城県など全国各地の人形合わせて1000点以上を展示。説明に当たった中野土人形友の会(会員・約100人)の市川一生(いつお)さん(68)は「中野の土人形は各地にあるきっちりした作りの人形とは違った素朴な味わいがあります。昔、布製の人形が買えなかった家々の子どもために作られたといわれたことからもうなずけることです」。 長野県高山村の郷土玩具収集家で、中野の土人形はじめ全国の人形や玩具2000点を収蔵しているという牧基之さん(64)は、特別展に1000点余を出品。「22歳のときから収集を始め、こけしや張り子などを探して東北地方などを歩き回りました」という牧さんは、特注の奈良さんの作品なども持ち、大事にしています。特別展は無料で観賞できます。