「誰かの真剣は、誰かの迷惑」…?迷惑をかけないことばかり気にする日本人が見落としがちな「おたがいさま」の精神
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行する。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第21回 『「多様性」の時代を生きる日本人へ...人間関係が楽になる! 中学生から始められる「エンパシー」を育てる方法とは』より続く
女子中学生の質問
終わった後、女子中学生がやってきました。 「私は、ずっと『人に迷惑をかけない』ことが一番大切だと教えられてきました」 混乱した表情でした。 それはよく分かる。じゃあ、「人に迷惑をかけない」について、もう少し付け加えましょう。 部活動を真面目に考えている人ほど、真剣な提案をすると書きました。 自分がやりたいことを主張すると、必ず他の人がやりたいこととぶつかります。 つまり「誰かの真剣は、誰かの迷惑」になるんです。
「迷惑」ではなく「おたがいさま」
「誰かの真剣は、誰かの迷惑」彼女が繰り返しました。 だから、「人に迷惑をかけるな」ということは、「絶対に真剣になるな」ということになってしまうんです。 「……でも、自分のやりたいことだけ言うのは、わがままっていうか、やっぱり、迷惑かけているんじゃないですか」 再び、彼女が言いました。 そうだね。自分のやりたいことだけを言ってたら、わがままになるだろう。だから、対話すれば、それは「迷惑」ではなく、「おたがいさま」だと感じるようになる。 「おたがいさま?」 彼女は意外な顔をしました。 うん。なんだか馴染みのない言葉かな? 真剣になってお互いがぶつかるのは、「迷惑」じゃなくて「おたがいさま」なんだ。