円安で物価上振れ続けば正常化ペース速まる可能性-日銀4月会合
(ブルームバーグ): 日本銀行が4月25、26日に開いた金融政策決定会合では、長引く円安について、基調的な物価上昇率に与える影響が従来よりも強まっている可能性を指摘する意見が複数出ていたことが分かった。19日に議事要旨を公表した。
会合では、円安が物価に及ぼすリスクに関して議論が行われた。ある委員は、企業行動の変化を受けて円安のパススルーの度合いは高まっているとみられるとし、「物価や賃金への影響が一時的なものにとどまらない可能性もある」と主張。別の委員も企業の賃金・価格設定行動の変化を踏まえると「円安・原油高が物価さらには賃金に波及するタイムラグが短くなっている可能性がある」と指摘した。
政策委員は、最近の円安が「基調的な物価上昇率にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要がある」との認識を共有。植田和男総裁は、円安が基調的な物価上昇率に無視できない影響を与えれば、政策対応を行う方針を繰り返しており、円安の基調への影響を巡って一段と議論が活発になりそうだ。
金融政策運営の議論でも、何人かの委員が2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現する観点から「基調的な物価上昇率の動向が重要である」と指摘。多くの委員は、「基調的な物価上昇率の高まりに応じて緩和度合いは調整していくことになる」としつつ、経済・物価の見通しを踏まえて「当面、緩和的な金融環境は継続する」との認識も示した。
正常化ペース
その上で1人の委員は、先行きの急激な政策変更を避けるために、「確度が十分に高くなる前から、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げにより緩和度合いを調整することも考えられる」と発言。ある委員は、現在の経済・物価見通しが実現すれば「金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」と述べた。
円安を巡っては、何人かの委員が、為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の一つとし、「経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金融政策上の対応が必要になる」と指摘。1人の委員は、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、「正常化のペースが速まる可能性は十分にある」との見解を示した。