月収50万円の夫と、月収20万円の妻の「共働き夫婦」が離婚したら…財産分与によって「年金額」はいくらになる?配偶者とぴったり半分こではない【弁護士が解説】
夫婦が離婚するときは、財産分与のひとつとして年金をわけることができます。しかし、年金分割の制度を誤解している人は非常に多いもの。正しく理解して、離婚後に後悔がないようにしましょう。本記事では、Authense法律事務所の弁護士白谷英恵氏が、年金分割について詳しく解説します。 都道府県「離婚率」ランキング
「年金分割」とは?
離婚時の財産分与で争点のひとつとなる年金分割とは、配偶者が婚姻期間中に納めた厚生年金の保険料を原則1/2として夫婦間で分割し、将来受け取ることのできるそれぞれの老齢厚生年金額を調整する制度をいいます。 年金分割=配偶者が将来受け取る老齢厚生年金を1/2の上限で自分のものにできる制度と誤解している方が多くいますが、将来の年金自体が1/2に分割されるわけではないことに注意が必要です。 離婚時に年金分割が必要な理由 20~60歳までのすべての国民が支払わなければならない国民年金の加入者は、次の3種類にわけられます。 ・第1号被保険者 国民年金のみを自分で支払う人 →自営業者(フリーランス)、フリーター、学生など ・第2号被保険者 国民年金と厚生年金を給与天引きで勤務先が支払っている人 →会社員、公務員 ・第3号被保険者 第2号被保険者の扶養に入り、自分では国民年金の支払いをしなくてよい人 →専業主婦(主夫)、年収が130万円を超えない人 会社員・公務員が国民年金とは別に負担している厚生年金は、給与天引きという形で勤務先が国に支払っています。 そして、厚生年金として天引きされる金額は給与の額によって異なり、給与が多ければその分厚生年金保険料も多く引かれる=より多く保険料を納付していることになります。つまり、将来受け取る老齢厚生年金額は給与の額が多ければ多いほど高くなるので、収入の違いにより夫婦間で受け取る年金額に差が出ることになります。 また、厚生年金を支払っているのは会社員・公務員である第2号被保険者のみですから、夫や妻の扶養に入っている第3号被保険者は将来、老齢厚生年金は受け取れません。つまり、第2号被保険者である配偶者とその扶養に入っている配偶者との間にも、将来受け取る年金額に差が出てくるのです。 年金を受給できる年齢になってもお互いが夫婦であれば、夫婦間で受け取る年金額に差があったとしても、それぞれの年金を夫婦の生活費に充てることができるのですから問題はありません。 しかし、離婚をしてしまうと、お互いの家計が別々になってしまうため、夫婦それぞれの受給額の差が問題となってしまいます。