異性の部下を2人きりのディナーに誘ったらセクハラ!? 気をつけるべき「セクハラの落とし穴」とは?
「あの人、パワハラで異動・降格になったらしいよ?」など、職場でパワハラが話題になることがありますよね。自分はパワハラしないから関係ない、と思っていても、不意打ち的に部下からパワハラで訴えられることもあります。「え? そんなことがパワハラになるの?」というパワハラのグレーゾーンはけっこうあるからです。そんな思わぬ「ハラスメントの落とし穴」を教えてくれるのが『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二/マンガ・若林杏樹)です。「上司も部下も、社会人全員が一度は読むべき本」「被害者や加害者にならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」「上層部に、強制的に読んでほしい1冊」と話題になっています。著者は人事・労務の分野で約15年間、パワハラ加害者・被害者から多数の相談に乗ってきた梅澤康二弁護士。これを読めば「ハラスメントの意外な落とし穴」を回避できます。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介します。 ● セクハラに該当する2つの言動とは? 最近では、セクハラへの社会的非難がよりいっそう厳しくなってきました。 昔は、セクハラは男性が女性に対してするものと考えられていましたが、最近では男性が被害者となるケースもよく聞きます。 たとえば、女性上司が部下の男性に対して飲みにしつこく誘ったり、体に不必要に触れたり、という事例が話題にのぼることもしばしばです。 男女共に、本当は不快な思いをしているけれども、場の空気を読んで我慢してしまうという人もいるでしょう。 しかし、セクハラをされた人は、毅然と拒否の姿勢を示してかまわないし、また、そうするべきでしょう。 まず、セクシャルハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条1項において、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義されています。 つまり、 1 職場で性的な言動が行われて、労働者の職場環境を害すること 2 職場での性的な言動に抵抗したことで、雇用上の不利益を受けること これらがセクハラに該当します。 以下、具体的な事例を見ていきましょう。 ● しつこく「2人で飲みにいこう」と誘う 【事例】 30代女性。会社で18時過ぎまで残業していると、40代の男性上司から「今日これから予定ある?」などと夜ご飯の誘いを受けることがしばしば。「まだ仕事が終わらない」「予定がある」などと断っていたが、あまり断っていると自分の立場が悪くなるのでは、と不安がある。上司と2人きりでご飯を食べにいくのは嫌だ。 【解説】 職場では、飲み会に誘うことも誘われることもありますよね。 飲み会に誘うこと自体は、職場内の人間関係を構築する手段としてただちに問題となるものではありません。 そのため、食事や飲みの誘いが人間関係を構築する範囲を超えないような場合は、セクハラに該当することは基本的にないでしょう。 他方、異性を2人きりのディナーや飲みに誘う行為は、世間一般ではデートの誘いとみなされることもあります。 そのような観点で見れば、食事や飲みの誘い方によっては、職場内での性的な言動の1つと評価することができます。 やんわりと断っているのに、異性である上司や先輩からしつこく2人きりの食事や飲みに誘われれば、相手が自分を異性として見ているのでは、と不快・不安な気持ちになるのは当然です。 繰り返し誘われれば、職場環境が害されることにもつながります。 そのため、異性の相手をしつこく食事や飲みに誘う行為は、これが行きすぎればセクハラと評価される可能性が高いといえます。 ● 部下と食事しながら、気軽に話したいときはどうすればいい? もちろん、当人同士の関係性によっては、2人きりで食事をすることにはなんら問題がないと思われます。 もし信頼関係が確立されておらず、セクハラだと誤解されたくないのであれば、次のような配慮があると双方安心できるでしょう。 ●ディナーや飲み会ではなく、休憩時間中のランチやお茶として実施する ●相手に対して、食事や飲み会に業務上の目的があるなら明確に説明する ●マンツーマンではなく、有志を募って複数名で実施する