中小企業の存在感しめせ! 社会の課題解決型企業が大阪に大集合
リノベーションのワンストップサービスを提案
2社目は中古住宅リノベーションのシンプルハウス(大阪市北区)。1982年の設立以来、住宅や店舗のリノベーション、インテリア販売などを手掛けてきた。長い実績を生かし、中古住宅リノベーションのワンストップサービスという新しいビジネスモデルを提唱し、今秋から事業化に乗り出した。 空き家対策が社会的課題になりつつある現在、リノベーションの重要性は早くから指摘されていながら、必ずしも進んでいないのが実情。住まいに関する生活者の思いは、殊の外強い。半面、中古住宅をしっかり改修し、快適な暮らしを生活者に提案提供する仕組みが整っていない。リノベーションに欠かせない専門的な人材や技術、情報などの有機的なネットワークが構築されていないからだ。 そこで、同社ではリノベーションのワンストップサービス「クラスカハウス」を開発。顧客に対し、「暮らしたい街はどこですか」「どんな暮らしがしたいですか」とたずねることから始めるという。顧客の要望を引き出しながら、中古住宅を探して改修プランを提示。以降、改修工事の施工から住宅ローンの契約支援までを、総合的に行う画期的なシステムだ。 これまでに同社はリノベーションで余ったタイルやガラスの端材を廃棄せずに活用した家具を商品化。シンプルな商品ながら、愛らしくて珍しい宝物感覚が好評を得てきた。リノベーションで実現する内装と家具の一体感や手作り感が、住まいへの愛着を一層深めてくれるのではないか。新築住宅には得られないリノベーション独特の味わい深い文化が創造されれば、リノベーションの動きも本格化しそうだ。
ものづくりと人づくりの両面で異彩を放つ
最終3社目のナオミ(大阪府箕面市)は小型充填機の総合企業で、ものづくりと人づくりの両面で異彩を放つ。ものづくりでは、ワンタッチのヘッド部交換で、液体、粘体、粉体を充填できる1台3役のパズル充填機を開発。食品製造の現場や飲食業界に新風を吹き込んだ。 機能が充実している他、操作が簡単で、使用後の洗浄も手間取らない。食品工場で事実上の主役を務める女性パート社員が扱いやすいよう、当初から配慮してあるからだ。カフェなどの小さな飲食店でも、手作りのジュースやジャム、特製のたれやドレッシングなどを、すばやく充填できれば、持ち帰りが可能となる。売り上げが伸び、顧客の喜びも増す。働く女性や小規模店にやさしいヒットマシーンだ。 ものづくりへの愛情は、人づくりにも息づく。会社を1日休んで、社員がホンネをぶつけ合う「ぶっちゃけ会」を開催。職場でストレスを感じても、話し合うことで小さいうちに解消し、働くことを通じて互いに成長を目指す。成長の場作りは社内にとどまらない。 京都市中京区の町家に開設された学び舎「傍楽(はたらく)」。同社が社会貢献活動の一環として運営するコミュニティスペースだ。さまざまな悩みを抱えた若者たちを迎え入れ、本社のように「ぶっちゃけ会」を開く。駒井亨衣社長自身が我が子の不登校などで悩んだほろ苦い体験を生かし、若者たちが生きることや働くことの大切さを学べる場を作った。 就職活動に疲れ、生きる気力さえ失いかけていた女子学生が、肩を落として「傍楽」にたどり着く。しばらく羽を休めるうちに、徐々に元気を取り戻す。4年次は同社でインターン生として働く。やがて今年4月、晴れて同社に新卒として入社。駒井社長から特命を受け、入社1年目ながらマーケティング・広報室を立ち上げ、初代担当者となった。 奇跡のような物語を演じたヒロインが、田中成美さんだ。駒井社長は田中さんの傍楽時代の第一印象を、「目を離しては危ないほどの落ち込みようで、とても心配していた」と振り返る。しかし、発表会では広報担当にふさわしく、駒井社長を懸命にサポートしながら報道陣の対応に追われていた。ものづくりと人づくりは、人智を超えて結びつく。