新型コロナで注目「オンライン診療」の課題とは? 医療崩壊を止められるのか
新型コロナとオンライン診療
黒木医師は、オンライン診療の限界と利点について「対面できませんから、触診や聴診はできません。ですから、今、呼吸が苦しいとか、嘔吐して点滴が必要だ、という患者さんについては、オンラインで診ることはできません。でも、治療方針が決まっているが、一人で通院することが困難な高齢者や仕事が忙しくて通院する時間がない人などにとっては、大きなメリットがあります」と述べた上で「今お話ししたのは平時の場合。新型コロナのことを考えると、オンライン診療の『非対面』という優位点がグッと上がります」と語ります。 それでは、今の事態に対処するために、どのようにオンライン診療を活用すればよいのでしょうか。 東京都医師会の尾崎会長は「クリニックなどに、新型コロナウイルス感染の疑わしい方(の来院)がたくさん増えてくるという段階では、初診からオンラインということを考えていかないと、院内感染などが起きる可能性がある。今までの(行動の)流れ、どこでどういう仕事をしているのか、あるいは今どういう症状があるのか、ということを丁寧に聞いていけば、オンラインでもある程度の振り分けはできるのではないか」との考えを示しました。つまり、新型コロナウイルスに感染しているかどうかわからない人(確定診断前の人)を、病院ではなくオンラインで診ようというものです。 しかし、黒木医師は少し違ったイメージを持っているようです。 「新型コロナウイルスの陽性が確定しても、大半は軽症ですから、その人たちはこれから入院先から施設や自宅に待機することになりますよね。そのような人たちの経過観察などを行うのに、オンライン診療を導入するのは非常に有益だと思います。初診といっても、退院後の初診ですね」 こちらは、確定診断後の人をオンラインで診察しようというものです。 「私を含めいくつかの医療機関では、紹介してもらえば、オンライン診療に対応できるだけの準備はできています。オンライン担当医を選ぶ時は、地域は関係ありません。オンライン診療を行っている医師が持っている専門性と、入院時に患者を診察していた医師とオンライン担当医同士の信頼関係の2つだけ押さえておけばよいと思います」 ただ実際にオンライン診療をやろうとしても、そもそもこれまで厚生労働省がとってきた「疾患制限」や「診療報酬の低め設定」といった方針などによって、オンライン診療に十分に慣れていて、速やかに対応することが可能な病院は限られています。このため、黒木医師は「現実的にきちんと(オンライン診療の)事例が出てくるかどうか。まずないだろう」と見ています。 「(2018年に)保険診療を適用した時に、疾患制限などをせずに、オンライン診療でできることの事例を蓄積しておけば随分と違ったはずです。そして、その上でオンライン診療のネットワークを築いていれば、だいぶ違ったでしょう。技術自体は進んでいるのですから」