経営の見える化で保育士の待遇改善? 行き届かない人件費、“180万円”どこへ… 園は定員割れ、現場と政策のギャップ
■園長に求められる資質とは
保育園の現状を変えるには、園長の力量が問われるのか。石井氏は「給与の裁量権も園長にある。職員や子どもの立場を考えられれば園も変わっていくが、意外と孤独な園長も多い。事務作業に加え、保護者や職員から文句を言われ、『現場に居たかったのに』と心を痛める人もいることを理解したい」。 園長になるための資格に明確な法的基準はないが、自治体独自の資格要件はある。東京都の公立認可保育園の場合、保育士資格は必須ではないが、児童福祉事業に2年以上従事、もしくは、それと同等以上の能力を有している必要がある。 てぃ先生は「園長になる人は、10~15年の保育経験があり、保育や子どもについては詳しい。ただ運営や経営の知識は、ほぼゼロ。人間関係のトラブルを相談しても『大変よね。頑張ってね』で終わりだ。園長としての能力がない人が多いから、労働環境も悪いままで、保育士は辞めていく」と苦言を呈する。 一方で、経営視点を強くしすぎるのも考え物だ。小林氏は「『保育はもうけるものではない』との前提知識を持った人が園長をやるよう、貫かないといけない」と忠告する。「待機児童問題で園ができて、もうけるだけもうけて、市場が縮小したらM&Aで売り抜ける。そういうことが多く、保育を荒らしている面が強い。保育は本来、自治体が行うものだと児童福祉法で位置づけられている。そこへ立ち戻るしかない」。
こども未来戦略の加速化プランでは、“量の拡大”から“質の向上”への移行を目指して、76年ぶりの配置基準改善を行っている。0歳児3人に保育士1人、1~2歳児6人に1人の比率は変わらないが、4月1日からは、3歳児15人(これまでは20人)に1人、4~5歳児25人(30人)に1人となった。 配置基準の見直しに、てぃ先生は「もっとやっていくべき」との立場だが、満たせる保育園が存在しない現状も明かす。「こんなに保育士が集められない。基準だけを改善しても、問題はループするだけ。個人的には、給料を増やすより、労働環境の改善を先にしないと、歯止めがきかないと感じる」と危惧した。(『ABEMA Prime』より)