経営の見える化で保育士の待遇改善? 行き届かない人件費、“180万円”どこへ… 園は定員割れ、現場と政策のギャップ
現役保育士で育児アドバイザーのてぃ先生は、それに加えて「人材確保にも使われている」と説明する。「保育士1人を雇うのに100万円を超えることもざら。紹介会社を通すと年収の20~35%がかかるが、労働環境が悪く1カ月後に退職する場合もある。そうすれば、また100万円が必要となるループに陥っている」。
■保育園が定員割れ 入ってもらうため躍起に?
こども家庭庁の資料によると、待機児童は10年ほど前には毎年2万人台を推移していたが、2017年の2万6081人を境に減少し、2023年は2680人とピーク時の1割程度に。株式会社明日香の調査によると、勤め先の児童数は「定員割れ」が24.3%、「定員とほぼ同数」が44.3%。また、少子化が続くと経営難に陥る可能性があるかとの問いには「非常にそう思う」が22.9%、「ややそう思う」64.6%と、あわせて9割以上の結果が出た。 てぃ先生は「都内でも定員割れの保育園が増えている」と語る。「園児獲得に必死になって、『うちは年長さんでプログラミングをやる』など、保育の中で“習い事”を始めると、その講師にも給料が発生して、保育士にまわらなくなる」「処遇改善手当は、保育士ひとり一人にではなく、事業者に一括で支払われる。それを保育士に直接行き渡る仕組みにすればいいのではないか」。
石井氏も「どこの現場も定員割れが普通。新設の審査に通っていても、子どもが集まらないからと、途中で開設を断念する保育園も多い。カリキュラムも自分で開発するのではなく、既存の民間サービスを導入するため、園の差別化にならない」と説明。 小林氏は「評判が悪い園ほど、立地をマーケティングして、便利な場所に開設する。親はだまされて、生き残っていく」とした上で、規制緩和による弊害もあると述べた。「“見える化”は第一歩に過ぎず、運営費の使い道を戻すよう規制を強化して、人件費は人件費、修繕費は別の公費で……としないと、お金をプールしたり、もっともらしい理由で悪用したりする人が後を絶たない」。