ナチュラリスティック・ガーデンに向く植物は? そんな疑問に答える貴重な1冊
『趣味の園芸』2023年10月号でも特集したナチュラリスティック・ガーデン。多くのガーデン愛好家たちが注目するこの新しいトレンドの庭には、どのような植物がふさわしいのか? それを知るために格好の1冊が出ました。編集部一の庭好きを自称するKが手に取ってみると......すごかった!
著者の一人であるピート・アウドルフさんは世界的に著名なガーデンデザイナー。2022年には日本でも初めて、東京・稲城市のフラワーパークにピートさんデザインのナチュラリスティック・ガーデンがオープンしました(『趣味の園芸』でも定期的にご紹介しています)。 ナチュラリスティック・ガーデンの手法は欧米でも比較的新しく、20数年前から普及し始めました。本書の書名にもなっている「1年を通して美しい」庭とは、花の最盛期だけでなく、花後にできるシードヘッド(タネの入っている莢)や、枯れた株姿なども含めて楽しむ庭です。あるいは、そうした楽しみ方に向く種類を庭に配することで、植物の新たな魅力を発見しようとする試み、といってもいいかもしれません。 そういった植物には、どのような種類があるのか。本書をひもとくと、国内各地の著名なガーデンで見かける種類が紹介されている一方、多くの人にとって耳なじみのなさそうな植物もたくさん見受けられます。すでに欧米で普及している植物でも、日本では最先端、あるいはこれから一般化する種類、ということになるでしょうか。 興味深いのは、本書の構成です。全体のボリュームの半分強が新しい宿根草やグラスなどの植物図鑑に割かれていて、これがメインともいえますが、残る半分も非常に参考になります。「植物の使い方」と題されたパートでは、「日差しと乾燥に強い植物」「半日陰で瑞々しく育つ植物」「軽やかで透け感のある植物」「自然なリズムとアクセントを生む植物」などなど、庭のデザインを考える際に考慮すべきポイントに添って植物が分類されています。 さらに細かく見てみると「落ち着きのある組み合わせ」とか「躍動感のある組み合わせ」、「冬のシルエットが美しい植物」「草紅葉が美しい植物」「倒れやすい植物と支える植物」「支柱のいらない植物」などの嬉しいリストも盛りだくさん。なかには「帝国主義的植物」(=よくはびこる植物)などという意表を突いたタイトルのコラムもあって、ページをめくる手が止まりません。巻末には1平方メートル当たりに植栽できる適正な株数の目安が植物の種類(属、種)ごとに示されており、これは便利! と感心させられます。 ナテュラリスティック・ガーデンを提唱したピートさん(と共著者のヘンクさん)は、すでに数多くのガイドブックを出版していますが、その代表的な著作の一つを日本語で読める意義はとても大きいと思います。原書に掲載されている学名だけでなく、本書では和名や異名もフォローされていて痒いところに手の届く配慮が素晴らしく、多くのガーデン愛好家にとって座右の書となるでしょう。ナチュラリスティック・ガーデンに興味のある方だけでなく、新しい宿根草について知りたいという人にとっても、大いに参考になるはずです。
さてさて、これからしばらく私(編集部K)は、読み込んでふと気づくと朝になっていた、なんてことになるかもしれません。くれぐれも睡眠不足には気をつけなければ。仕事が......。 『趣味の園芸』テキスト編集部では、引き続きナチュラリスティック・ガーデンに注目していきます。