横浜栄、2点のビハインドから追いつきPK戦を制す 「超えたい気持ち」横浜栄の負けられなかった理由
7月14日、第103回全国高校サッカー選手権神奈川予選の1次予選3回戦1日目が7月14日、県内の各会場で開催され、横浜栄と上鶴間が対戦した。(試合は35分ハーフ) 【フォトギャラリー】横浜栄vs上鶴間 攻める横浜栄。守り耐える上鶴間。互いに決定機のない膠着状態が続いた前半を見る限り、先制点は攻める横浜栄かと思われたが、実際は上鶴間だった。 前半33分、CKから最後はMF7大矢琉星(2年)が叩きこみ先制。さらに後半4分、横浜栄DF陣の連係ミスを見逃さず、FW8吉澤夢空(1年)が流し込んで追加点をあげた。しかし横浜栄は2分後の同6分、コーナーキックのクリアボールを拾ったDF3鎌原悠大(3年)が目の覚めるようなミドルシュートを決め、1点差とした。 つなぎながらサイド攻撃を繰り返す横浜栄。縦に速いカウンターで押し返す上鶴間。互いにチャンスを作りながらも、得点のないまま時間が経過した。 このまま終わるかと思われた終了間際の同35分、横浜栄、左サイドの突破からゴール中央でマイナスのパス。これをMF6谷口皆人(3年)がインサイドで合わせ、同点に追いつき延長戦へ。 試合を大きく分けたのが延長前半8分。上鶴間がペナルティエリア内でファールを受け、PKの判定。しかし、任されたキッカーは大きく外してしまい、千載一遇のチャンスをふいにしてしまった。 勝敗は延長でも決着つかず、PK戦に。先攻は上鶴間。後攻が横浜栄。双方1人目は成功し、迎えた2人目。上鶴間が外すと、その後両チーム、5人目まで全員が決め、試合は5-4で辛くも横浜栄が勝ち、1次予選ブロック決勝に進んだ。 「最後まで集中を切らさず、選手たちはやってくました。よく頑張ってくれました」とイレブンと称えた横浜栄・平田優監督。その表情は安堵と疲労が入り混じっていた。 こちらが「この試合でMVPをあげるのならば」と問うと、すぐさま挙げたのは0-2で迎えた後半6分、反撃の1点目を挙げたDF3鎌原。平田監督は「失点直後からすぐ取り返せたのは大きかったです。(鎌原は)目立たない選手ですが、1年間、継続して、コツコツやってくれる選手。きょう結果に出たので、1年間だけでなく3年間の成果が出たと思います」と称えれば、DF3鎌原も「落ち着いて蹴ることができました。練習での自分を出せたと思います」と流れを引き寄せたゴールを振り返った。 横浜栄には薄氷の勝利だが、0-2から2-2に追いつけたといえる。その原動力を平田監督は『昨年の悔しさ』と語った。 「昨年同じ予選ブロック3回戦で、そして同じ会場で(※立花学園0-1)負けました。(今回、出場していた選手の)半分くらいが昨年の試合に出ていたので、そこを超えたいという気持ちが強くありました」 「超えたい気持ち」。この思いを抱いた選手のひとりがFW7雫石隼人(3年)。試合を通じ、左サイドから何度も何度も疾駆。味方からパスを受けては一心不乱に仕掛け、たとえ相手選手にマークされようが、囲まれようが、執拗に突破を試み続けた。「彼(雫石)が人一倍、悔しい思いをしたので、このゲームにかける思いはありましたし最後まで戦ってくれました。またほかの選手に強く要求したり、強い気持ちが感じられました」と平田監督。 この言葉通り、2点目をアシストしたFW7雫石は「昨年、同じ3回戦で負けているので悔いが残っていました。先制されましたが、諦めずにプレーできました。イレブンのひとりでも勝てないという気持ちになるとダメだと思うので、みんな勝つ気でいたからと思います(笑)」と勝因を語った。 最後まで戦えたのは気持ちだけではない。聞けば、FW7雫石は中学のとき、サッカーと陸上競技を一緒にやっており、陸上の大会に出場していたそうだ。「体力には自信はあります。あとは気合いです(FW7 雫石)」。あの速さ、そして無尽蔵のスタミナは伊達ではなかった。昨年の壁を乗り越えた横浜栄は20日、1次予選ブロック決勝で横浜創学館と対戦する。 (文・写真=佐藤亮太)