西武・松井稼頭央が引退会見。野手転向、スイッチ、MLB…「永遠の挑戦」
楽天時代の松井に野球論について深く聞かせてもらう機会があった。 この日の会見では、日米の野球の違いについて「太陽の近さと、芝の匂い。子供の頃のような感覚を持って野球をやった気がする」と答えたが「メジャーで7年プレーして再確認できたことがある」と言っていた。 「大事なのは基本なんだ。基本の積み重ねが進化を呼ぶ」 松井は、アストロズで同僚だったミゲル・テハダの話を続けた。 「あれほどの選手でさえ基本を繰り返していたんだよ。体が硬そうに見えるが、そういう基本をやっているから俊敏な動きにつながるんだ」 基本練習ほど面倒で辛く厳しい練習はない。それを40歳を超えても、25年間、繰り返し続けてきた。そこに史上最強のスイッチヒッター松井を生み出した秘密がある。 「結果は伴わなかったけれど準備だけはやってきた」 基本練習と準備がズバ抜けた身体能力を技術に結びつける作業を支えてきた。 「結果が出ないのは技術不足なんだ。どの場所で、どういう理由があろうと結果が出ないのは、自分の責任。環境が違う、年齢で結果が出ない、それは自分の弱さだ。だから技術を磨くしかない。永遠にね」 永遠の挑戦―。 「ほとんどが苦しみや、悔しさ。でも少しの喜びを得るために悔しさがあるのかなと、思ってやっていた」 その「挑戦」や「努力」が無駄ではないこともこの25年間で知った。 「(こんな野球人生を送れるとは)想像ができなかった。小さい頃からプロになりたいと思っていたが、まさかプロの世界に入れるとは思わなかった。まさかスイッチをやるとは思っていなかった。アメリカに行くとも思っていなかった。引退会見も開いてもらえるとも思っていなかった。20年間、現役でプレーしたいと思っていたが、25年間もできた。夢や思いは叶うものなのかな。思ったことの積み重ねが大きなことになった」 引退発表は終えたが、まだやり残したことがある。 「まだシーズンが残っている。兼任コーチの立場もあり、最後まで全員でひとつになって束になって戦いたい。最後が終わるまで終わりじゃない。ライオンズに世話になって、まだ日本一がない、日本一になって最後の花道を飾れるように、その輪の中に入れるようにチームのため、ファンのため、優勝、クライマックス、日本シリーズへ全力でやっていきたい」 西武で3度リーグ優勝しているが、日本シリーズではいずれも敗退した。 だが、この2018年のチームには、手ごたえがある。 「これだけ、打てる、走れる、守れる、が揃い、タレントも揃った時代もない。僕がいたときには打者も凄かったが、ピッチャーに助けていただき、1点で勝つ、守り抜くチームだった。今年、同じチームで1年間、プレーさせてもらったが、心強く野球人生の財産になった」 西武復帰の際、テクニカルコーチという立場での兼任コーチを依頼した球団の松井に対する指導者としての評価は高い。将来の監督候補だろう。 松井自身も「先のことは考えていないが、野球には携わっていきたい」という。 会見の質疑応答で「野球とは?」と哲学的な問いをされた松井は、こう答えた。 「なくてはならない存在。野球が好きで始めて、今もまだ野球が好きです。この先も好きであり続けると思う。好きで始めた野球。好きのままで終われる野球人生。それもいいのかなと」 最後まで涙はなかった。 「涙? うれし涙としてとっておく。日本一です」