『2024.1.6 → 2025.1.4』 国立競技場への帰還を真剣に目指した「2024年の堀越」がたどった1年間の軌跡
[1.4 選手権準々決勝 前橋育英高 1-0 堀越高 フクアリ] 「去年の準決勝に負けた時から、『絶対国立に戻ってくる』という気持ちをずっと持ってきましたし、日々のミーティングでもそういうことはずっと会話の中に入れながら、この1年間はここまでやってきました」(堀越高・竹内利樹人)。 【写真】「美しすぎ」「めっちゃ可愛い」柴崎岳の妻・真野恵里菜さんがプライベートショット披露 2024年1月6日。国立競技場。高校選手権準決勝。近江高(滋賀)に1-3で敗れた瞬間から、『2024年の堀越』はスタートした。 4月。周囲からは『全国4強のチーム』という視線で見られる中で迎えた、関東大会予選の初戦。堀越は東海大菅生高に2-1で辛勝。何とか白星を手にしてみせる。 「ああいう国立の舞台で、全国のレベルの高い選手とやれたことは去年の先輩たちが残してくれた大きな財産なんですけど、それをもっと経験していない選手に伝えなきゃいけないですし、それを日常に取り入れることで、あのレベルにもう1回戻れるのかなとは感じているので、まだまだ試合に出ていた選手の覚悟が足りていないのかなと」。 試合後に今季のキャプテンを務めるDF竹内利樹人(3年)は、危機感を滲ませながら、こう話す。結果的に堀越は関東大会への出場権を懸けた準決勝で、日大豊山高に0-1で惜敗。6月に行われたインターハイ予選でも2回戦敗退を突き付けられるなど、なかなか思い描いていたような結果は付いてこない。 「それまでは外からの目や評価を気にしたり、『志向してきたサッカーをやることが自分たちのスタイル』みたいな感じだったんですけど、『いやいや、オレたちがやってきたことってこんなことじゃなかったよな』というところをもう1回見つめ直せたのが今シーズンの前半戦で、後半戦からは『もう1回全国の舞台に帰るために、オレたちはどうするんだ?』ということは、みんな必死になって考えたと思います」。 そう語るのはチームを率いる佐藤実監督。選手たちはもう一度足元を見つめ直し、原点に立ち返って、ベースとなる戦い方の目線を揃えていく。とりわけ大きなきっかけになったのは、8月に実施された群馬遠征。ここで改めて『2024年の堀越』が纏っていくべき色が見えてきたという。 「あの群馬遠征で、今チームとしてやるべきこととやらなくてはいけないことを、ミーティングや試合をやっていく中で整理して、それでみんなもやることが明確になって、同じ方向を向いてできるようになったところがあって、そこからはリーグ戦も一度も負けなかったので、そこが1つのターニングポイントだったと思います」(森章博) その時期は竹内がケガで離脱していたため、グループをまとめる役割を担っていた副キャプテンのDF森章博(3年)は、群馬遠征以降のチームに小さくない手応えを感じ始めていた。実際に堀越は、6月から実に半年近く公式戦での無敗を続けていく。 選手権予選も決して順当に勝ち上がっていったわけではない。3回戦の日大三高戦では後半終了目前に勝ち越されながら、失点から3分後のラストプレーで何とか追い付き、延長戦の末に薄氷の勝利。「『もう終わるかもしれない』と思った、あの地獄のような3分間があってから、監督からもキャプテンの竹内からも『あの3分間を意識して練習しろ』みたいな話が出てくるようになりました」と明かすのはDF森奏(3年)。以降のチームは『地獄のような3分間』の経験を心に刻み込む。 決勝の実践学園高戦も、一度は延長でリードを許したものの、そこから2点を奪い返す劇的な逆転勝利を収めて、冬の全国への帰還を果たす。「最後に本当に積み重ねてきたものが出たと思うので、自分たちのやってきたことが間違ってなかったということが証明できたんじゃないかなと思います」と口にしたのは森章博。いつしか彼らは“勝負強さ”という『2024年の堀越』の色を、明確に打ち出せるようになっていたのだ。 「もちろん自分たちが積み上げてきたものがあるので、そこに自信は持ちたいんですけど、やっぱり結果で見返したかったというのが一番大きいので、悔しいですね」(竹内) 2025年1月4日。フクダ電子アリーナ。高校選手権準々決勝。前橋育英高(群馬)に0-1で敗れた瞬間に、『2024年の堀越』は終焉を迎えた。 「去年の国立があって、自分たちの実力と周りの評価のバランスが変わってしまったので、今年の彼らはずっとプレッシャーがありながら、何をやっても『勝って当たり前』と思われたりして、フワフワ浮いちゃうような状況ではあったと思うんですけど、その中で自分たちをしっかり見つめ直して、ここまで持ってきてくれたことは凄く評価できますし、いろいろな意味で良い代だったと思います」。 佐藤監督は改めて3年生たちの奮闘を称える。今大会も初戦となった2回戦で津工高(三重)に2-0、3回戦では松山北高(愛媛)に6-1と続けて快勝。最後はプレミアリーグ所属の強豪に1点差で競り負けたものの、1年を通じて手にしてきたチームとしての力は披露してみせたと言っていいだろう。 選手権予選中に指揮官が話していた言葉が、ハッキリと印象に残っていた。「去年出した結果は本当に素晴らしいことで、その時のメンバーも残っていますし、当然相手からはターゲットにされますけど、強豪になっていくチームというのは、そこをさらに超えていくわけで、今は我々が“強豪”と言われるチームになっていくのか、それとも『上手いけど良いチームだね』というところで終わるのかの際に来ていると思っているので、ここはみんなで乗り越えないといけないと思っています」。 昨年度の4強に引き続き、今シーズンも堀越は日本中で8チームしか戦うことを許されない、選手権の準々決勝まで勝ち上がってきた。ここ5年で4度も東京の代表権を勝ち獲り、そのうちの3度は全国ベスト8以上という成績。端から見れば“強豪”と呼ばれるフェーズに入ってきていることは間違いない。そのことについて佐藤監督に水を向けると、こんな答えが返ってきた。 「もちろん他者評価ではあるんですけど、十分そこには入ってきたかなと。じゃあここからどうこのグループの中にい続けて、そこからどうやって優勝や本当に国立で勝つようなチームになるのかということが、ここからは問われているかもしれないですけど、入口には立ったかなと思います」。 目指してきた国立競技場への帰還には一歩届かなかったけれど、勝てない時期も、うまく行かない時期も、真摯に目の前の日常と向き合い、紆余曲折を経ながら全国8強を達成したことには、大いに胸を張っていい。全国的な強豪という立ち位置を確立するための入口まで、力強くチームを引っ張ってきた『2024年の堀越』の選手たちに、大きな拍手を送りたい。 (取材・文 土屋雅史)