犠牲は「当然」?明らかになった米国の対中戦略「残酷すぎる」
知らぬ間に「米国のミサイル基地」と化していた日本 日本にとっての「最悪のシナリオ」とは? 【写真】犠牲は不可避の「スタンド・イン部隊」沖縄に発足! 政府による巧妙な「ウソ」とは一体…? 国際情勢が混迷を極める「いま」、知っておきたい日米安全保障の「衝撃の裏側」が、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』で明らかになる。 ※本記事は布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』から抜粋・編集したものです。
海兵隊の遠征前進基地作戦(EABO)
CSBAが海洋圧力戦略を発表したのとほぼ時を同じくして、海兵隊は「遠征前進基地作戦(EABO)」と名付けられた作戦構想を正式に採用します(2019年2月に海軍作戦部長と海兵隊総司令官が署名)。 EABOは、敵国(主に中国を想定)が米軍の接近を阻むA2/AD能力を保持していることを前提に、その脅威圏内の島々などに機動力のある小規模な部隊を分散展開させ、米軍の主力部隊が接近できる環境を作り出す作戦です。 具体的には、敵の攻撃能力の脅威が及ぶエリアにある島々などに一時的な作戦拠点(遠征前進基地)を確保し、移動式レーダーや無人機などを用いて敵の情報収集を行うとともに、地対艦ミサイルなどによって一時的な海上優勢を獲得して空母機動部隊をはじめとする海軍主力部隊が戦域に接近できる条件を作り出します。 敵の攻撃を受ける危険性が高いため、一つの拠点に長時間留まるのではなく、移動を繰り返しながら作戦を実行します。EABOの担い手を、機動力のある小規模な部隊としているのは、そのためです。
「犠牲は前提」のスタンド・イン部隊
海兵隊は2019年以降、EABOに基づくウォー・ゲーム(戦争のシミュレーション)を集中的に実施しました。2020年3月に公表された「フォース・デザイン2030」(10年後の海兵隊の戦力設計を示した文書)は、その所見を次のように記しています。 敵対者の長距離精密火力兵器の脅威圏内で継続して作戦を実行できる戦力は、生存のために脅威圏外に迅速に機動しなければならない戦力より作戦上有効性が高い。これらの「スタンド・イン部隊」は、敵戦力を消耗させ、統合軍によるアクセスを可能にするとともに、敵対者の標的化を困難なものとし、そのISR(情報収集・警戒監視・偵察)資源を消耗させ、(現状変更の)既成事実化を防止する。 ここで述べられているように、空母機動部隊をはじめとする海軍の主力部隊は、中国軍のミサイルなどによる攻撃の危険を回避するため、いったん脅威圏外に引き下がることが想定されています。たとえば、横須賀に配備されている原子力空母をはじめとする米第七艦隊の主力艦船は、自らを守るため、いったん日本から脱出するのです。 一方、海兵隊は日本に留まり、小規模な部隊に分かれて南西諸島の島々に散り散りとなり、移動を繰り返して中国軍の攻撃をかわしながらEABOを遂行します。このように、敵の脅威圏内で活動する部隊のことを、海兵隊は「スタンド・イン部隊」と呼んでいます。海兵隊が行ったシミュレーションでは、この部隊の有効性が証明されたというのです。 しかし、こうも記しています。 (戦力の)消耗は避けられない。米国は、航空機、艦艇、陸上戦術車両および人員を失う。 敵の脅威圏内で活動するスタンド・イン部隊は、犠牲が不可避の部隊なのです。