佐藤蓮、スーパーGTに3年ぶり復帰&GT500ステップアップ。スーパーフォーミュラで大いに成長「皆さんの支えでしっかり走ることができた」
先日、ホンダ・レーシング(HRC)が2024年シーズンにおける国内レースの参戦体制を発表。佐藤蓮はスーパーフォーミュラではNAKAJIMA RACINGに残留するほか、ARTAからスーパーGTのGT500クラスにステップアップすることが明らかとなった。 【動画】佐藤琢磨&中嶋一貴、スーパーフォーミュラで鈴鹿サーキットを”まさかの”逆走?? 弱冠22歳。ホンダ陣営若手のホープが、ついに国内2大カテゴリーのシートを共に獲得した。ただここまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。 2019年のFIA F4でチャンピオンとなった佐藤は、2020年にホンダのサポートの下で渡欧しフランスF4に参戦。王座はホンダ育成のライバルである岩佐歩夢に奪われたものの、現在レッドブルジュニアに所属するアイザック・ハジャーを上回ってランキング2位でシーズンを終えた。2021年からは日本に戻ることとなり、スーパーフォーミュラ・ライツとスーパーGTのGT300クラスに参戦。共に年間ランキングで上位につける活躍を見せたが、11月末に富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT最終戦で、彼のレースキャリアの分岐点とも言えるアクシデントが起きた。 このレースでGT300の王座争いに絡んでいた55号車ARTAの佐藤は、タイトルを争うライバルとバトル中であった。しかしレース終盤、TGRコーナー(1コーナー)でインに飛び込んだ際、GT500クラスの連覇が視野に入っていた1号車STANLEY NSX-GTの山本尚貴に追突と接触。結果として山本はタイトルを逃す形となった。 同じホンダ陣営のドライバー、チームのタイトル獲得のチャンスを摘むような形になってしまったこともあり、レース直後の佐藤は沈痛な面持ちで関係各所への謝罪に回っていた。20歳のドライバーが背負うには重すぎる十字架。佐藤本人も精神的に辛く苦しい日々を送ったことは想像に難くない。 翌2022年シーズン、佐藤はスーパーGTのシートこそ失ったものの、スーパーフォーミュラへのステップアップを果たした。チームは新興チームの TEAM GOHだったが、レッドブルジュニアチームの一員に選ばれ、その期待感をうかがわせた。同年の佐藤はデビューレースでいきなり予選2番手を獲得すると、最終ラウンドでは初表彰台も手にして見せた。 翌2023年シーズン、佐藤はNAKAJIMA RACINGに移籍した。前年のように表彰台やフロントロウを獲得することはできなかったはならなかったものの、ドライブシャフトの破損でスタートできなかった第3戦、フロアのトラブルに見舞われた第9戦を除く7レースで完走し、内5レースで入賞。安定感をアピールし、ランキングではチームメイトで3度のSF王者である山本尚貴を上回った。 そしてこの度、新たにGT500参戦のチャンスを得た佐藤。2年前の富士での一件を乗り越えるのは簡単なことではなかったのではないかと尋ねると、佐藤はHRCをはじめとする関係者の支えにも助けられたと語る。 「起きたことは自分のミスとして受け止めています」 「そこから一歩踏み出すということは簡単ではありませんでしたが、HRCさんやスポンサーさんたちをはじめとする周囲の皆さんの支えもあり、2年間しっかり走ることができました」 スーパーフォーミュラにステップアップするまでは、接触やコースアウトを喫する場面も散見された佐藤。しかしSFでの2シーズンでは、前述のトラブルに見舞われたレース以外は全て完走している。これは本人の中でも、目標として強く意識していたとのこと。こういったリザルトも、佐藤をスーパーGTに復帰させるというHRCの決断に少なからず影響を与えたに違いない。 「自分の中では目標として完走を掲げていて、結果はどうであろうととにかく完走だけはしたいと思い、走ってきました」 「今年はトラブルも重なったりして全戦完走はなりませんでしたが、レースでは安定して走ることができたと思います」 「SFのスピードはF1に近いと言われるほどで、レース中のバトルにも緊張感があり、その中で磨かれるものはすごくあります。この2年間は自分の中で大きく成長できたと思っていますし、それを見てGTに起用していただいたHRCさんに感謝です」 自らの走りで評価を勝ち取り、チャンスを広げた佐藤。初参戦のGT500では、2023年にホンダ勢最上位となったARTAの16号車に加入し、大津弘樹とコンビを組む。 「(GT500は)タイヤがマルチメイクですし、車重がSFの倍近くあるので、ロール量は増えるしブレーキは止まらなくなります。そこにいかに早く慣れるかが重要だと思います」と語る佐藤。そこに素早く順応してチャンピオンを目標に戦いたいと意気込んだ。 「もちろん、目標としてはチャンピオン獲得です」 「大津選手はスクール時代から講師として教えていただく機会も多かったですし、SF最終戦や合同テストを含めて一緒にいることが多かったので、お互いのドライビングの特徴も分かってきました。あとは自分が早く慣れて、良いレースができるようになることがチャンピオン獲得に向けては重要な課題になるので、そこにフォーカスしてオフシーズンを過ごしたいです」
戎井健一郎
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