佐藤健は「とても熱い人」 『四月になれば彼女は』山田智和監督を感激させた一言
「劇中、藤代が泣くシーンが何回かあるんですけど、初め脚本に“洗面台の前で泣く藤代”と書かれていたのを、佐藤さんが撮影現場で“彼女との思い出のモノを見てお芝居がしたい”という提案をくれて。じゃあワイングラスの前にしようと、部屋でうずくまって泣くというシーンになったんですけど、そういう細かいところのアイデアもくれて常にディスカッションしていた感じです」
本作で佐藤は10代後半から30代までを演じ分けているが、演技面についてはほぼ一任していたという。
「信じていたのでお任せしていました。大学時代の藤代は、目の奥に光る輝きがちゃんと10代になっていて、すごいなと。かたや精神科医になった現在はいろんな人たちを見てきて物事を一歩引いて見ている感じが出ている。そんな繊細なお芝居をモニター越しに見ていて、何も心配いらないなと感じたのを覚えています」
山田監督が特に心を動かされたのが、春と破局した藤代が泣き崩れるシーン。 「エスカレーターで泣く芝居は、前半の肝というか。当日に急遽、撮影場所が決まったシーンで、しかも1テイク目です。それまで森さんと時間を積んでくれたことを思うと、感動しました」
大学時代に写真部に所属していた藤代と春がカメラを手に街を散策するシーンなど、藤代と春のシーンはアドリブが多かったというが、これは「初恋なのでデートも探り探りだったのではないか」という山田監督の考えに基づくもの。 「自分たちもまだその感情の正体がよくわかっていないというか、探り探りな2人というのをイメージしていました。秋葉原に向かったはいいけど、先々の予定は決まっていないみたいな。雨が降って雨宿りしているときの初期衝動。そういう感情を撮りたい時に、芝居を決め込むのもどうなんだろうと。佐藤さんと森さんの芝居は本当に意気投合していて、僕らが想定していたものを軽々超えていました。でも 実は藤代と弥生のシーンでも結構同じようなことをしていて、当日に台本を渡してドキュメンタリー的にやらせてもらったところが多いです。付き合い始めた日に記念写真を撮っているところ、一緒にご飯を食べているところ、橋で座っちゃうところとか。脚本には点描として一行で書いてあるんですけど、長くカメラを回させてもらったりもしました」