なぜ公明党は「裏金議員」を推薦したのか? 大敗は“自民党のとばっちりのせい”ではない? “鉄壁”が崩れた真相に迫る
石井啓一代表が落選するなど先の衆院選で8つの議席を失った公明党。 いったいなぜこうなったのか? テレビ朝日政治部 与党担当の大石真依子記者に話を聞いた。 【映像】公明党が「裏金議員」を推薦した理由 ━━この結果をどのように受け止めているか? 「石井新代表が誕生後わずか1カ月あまりで辞任することとなり、党内には衝撃が走っている。代表の落選は、2009年に当時の太田代表以来のことだ。衆院選当日、私は公明党本部の開票センターにいたが、石井代表は深夜1時半頃に記者団の問いかけに一切応じず、厳しい表情で車に乗り込んで党本部を後にした。本人のショックも大きかったのだろう」 ━━後任はどうなるのか? 「まさかこのタイミングで代表交代になるとは誰も想定をしておらず、党内でみんなが一致して『この人だ!』という候補がいるわけではない。何人か名前が挙がるが『刷新感』を重視するならば岡本三成政調会長と竹谷とし子副代表の2人だ。岡本氏は、先月末に政調会長に就任、経済分野に明るく能力を高く評価する声がある。副代表のひとりである竹谷氏についても『女性だし年齢的にも刷新感がある』との声がある。だが、共に党運営の経験不足は否めない」 「また、いまの危機的な状況を受けて、ベテラン2人の名前も挙がっている。一人は山口那津男前代表だ。『山口さんの再登板が一番おさまりがいい』と話す党関係者もいるが、山口氏自身は周辺に、『時代が逆戻りしてしまう』と話していて、自身の再登板に否定的な考えを示している。党運営の経験も豊富な斉藤鉄夫国交大臣の名前も挙がるが、山口前代表と同世代であり、せっかく進めている世代交代を後退させてしまう印象は否めない。誰が代表になったとしても大変な局面であることは間違いなく、党関係者は『全員で支えてやっていくしかない』と話している。新代表は11月9日に臨時の党大会を開いて決定される予定だ」 ━━改めて今回の衆院選、公明党の得票数は過去最少だった。原因は何か? 「ある党関係者は、今回の敗戦の原因を『自民党の政治とカネの問題、そして選挙戦終盤に明るみになった“2000万円問題”に尽きる』と話している。石井代表も、政治とカネの問題で自民党への逆風が吹く中で、連立を組む公明党もそのあおりを受け、『逆風を跳ね返す党自身の力量が足らなかった』と振り返っている。また、公明党として『クリーンな政治』を掲げて選挙戦を戦っておきながら、政治とカネの問題で自民党が非公認としたり比例代表との重複立候補を認めなかった候補30人以上に推薦を出したことも、有権者からの理解を得られなかったようだ」 ━━自民党が非公認としたり比例代表との重複立候補を認めなかった候補30人以上に、公明党が推薦を出した理由は? 「石井代表は、推薦の条件として『説明責任を果たしているかどうかや地元の党員や支持者の納得を得られているかどうか』といった点を挙げて、あくまで党独自の基準をもとに推薦する・しないを決めたと強調していた。ただ、ある党関係者は、これまで何度も自民・公明で選挙協力をする中で、各地で協力体制というのが出来上がっていて、『仮にこれまでと違って推薦しないということになると、じゃあ選挙協力は今回はどうなるんだ、となってしまう』と話していた。もちろん批判も覚悟での決断ではあったが裏目に出てしまったと言わざるを得ない」 ━━今回の衆院選では、公明党が大阪で維新に全敗したことが大きく取り上げられているが、どのように受け止めている? 「大阪の4つの選挙区全てを落とす、という結果には衝撃が走った。関西は伝統的に支持母体である創価学会の組織力が強く、“常勝関西”として知られている。ただ、今回は選挙戦の構図がこれまでと大きく変わった。これまで維新は、大阪都構想の実現のために公明党の協力を得るために、公明党が候補者を立てる大阪の4つの選挙区への候補者擁立を見送ってきた。だが、都構想が否決に終わり、去年4月の統一地方選挙で大阪市議会で単独過半数の議席を獲得したことで、公明党に遠慮をする必要がなくなって維新が対抗馬を立ててきた。そして今回、維新との全面対決となり、その全てで維新に敗れる結果となった」 ━━公明党内では今回の選挙結果についてどんな受け止めがされているのか? 「自民党に対する怒りは当然ある。石井代表も最終盤にきて2000万円の問題が出たことについて、『非常に大きなダメージになった』と振り返っている」 ━━公明党の支持母体である創価学会はどんな状況でも「組織票は固い」というイメージがあるが実情は異なるのか? 「ある党関係者は『今回も学会員は100の力で運動してくれていた。だが、とにかく政治とカネの逆風が大きかった』と話していた」 ━━気になるのは今後の政権運営だ。自民党と公明党の関係性は変わるのか? 「変わる雰囲気は一切ない。むしろ、衆院選翌日の28日に自公党首会談を行って、政策合意を結んでいる。そこで、この非常に厳しい選挙結果を厳粛に受け止めて、政治への信頼回復のため、政治改革のほか物価高対策や少子化対策などに取り組む方針を確認している。25年=四半世紀にわたって自公はともにあるわけで、このタイミングで野党結集になびくなんてことはあり得ない。自民党とともに、いかに国会運営を進めていくかなど、難題に向き合うことになりそうだ」 ━━公明党は支持層拡大や勢力維持に向けてどのように動いていくのか? 「誰も明確な回答をもっていない、手探りで進めているという現状だ。党自身、また各議員がSNSでの発信に力を入れたり、支持層拡大に向けて色々と模索はしているが、現状結果につながっているとはいえない。新代表には、来年夏の都議選や参院選も控える中で、いかにして党勢拡大を進めていくかという難題ものしかかる」 (ABEMA/倍速ニュース)
ABEMA TIMES編集部