「吉祥寺駅北口の駐輪場」売却問題 土屋元市長の請求を棄却し、松下前市長の正当性を認める地裁判決
背景に「近鉄裏」と「放置自転車」の問題
土地A~Cが位置する吉祥寺駅北口・東側は、旧「近鉄百貨店東京店」(現「ヨドバシカメラ」)の裏手に位置することから「近鉄裏」と呼ばれている。 そして、近鉄裏は風俗店やラブホテルも立ち並ぶ歓楽街だ。子育て世代も多い武蔵野市では、街の「顔」ともいえる吉祥寺駅のすぐ近くに歓楽街があることは、以前から市民には歓迎されていなかった。 市側はこの地域に公民館や図書館を設置することで、新規店の設置を不可能にするなどの対策を講じ、ピーク時には90件ほど存在した風俗店も徐々に数を減らしていったが、依然としてまちづくりの課題になっている。 「土地売買により、治安が悪く雑然としている近鉄裏の開発が進むと、多くの市議員が賛同した」(松下前市長) また、武蔵野市は1991年には放置自転車数が1日に約4000台あり、全国ワースト1位となっていた。市は対策に取り組み、2022年には1日に約80台にまで減少。吉祥寺駅周辺に多数の駐輪場が設置されていることも、対策の一環だ。 松下前市長は、放置自転車対策が進んだ現在となっては駐輪場の重要性は低くなっているとして、駐輪場用地を民間企業に売却した合理性を強調した。 「自転車がただ置かれているだけの建物が駅前の超一等地に存在することが、まちづくりにとってどんな影響を与えるか、考えてみてほしい。現在は土地の利用を新たに考える段階だ」(松下前市長) 松下前市長によると、今回の土地売買は、2021年11月の武蔵野市長選挙の際に突如として問題視されたという。 「元市長が裁判まで行っているのは、『松下(前)市長にはどこか問題があるのではないか』と市民に疑いを持たせることを目的とした、意図的で猜疑的な攻撃だ。こうした攻撃は、政治そのものの信頼感を失わせることになるのではないか。 原告らの主張をすべて明確にしりぞけた今回の判決を正面から受け止め、市政を混乱させて私の名誉を毀損する攻撃をこれ以上行わないように、強く求める」(松下前市長)
弁護士JP編集部