あえて「つらいこと」「苦しいこと」をやってみる…「最近、喜びを感じていないな」と思ったらちょっと試してほしいこと【心理学者が解説】
空腹のときに食べるご飯は、いつもより美味しいと感じますよね。苦しさがあるからこそ、私たちは喜びを感じられるといいます。内藤誼人氏の著書『すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、より幸福に生きるために心がけるべきことについて、社会心理学の観点から見ていきましょう。
苦しみと喜びは表裏一体
私たちは、つらいこと、苦しいことからは、できるだけ逃げようとするものです。 けれども、あえて苦しいことをしてみるのも、決して悪くはありません。なぜなら、苦しさを乗り越えてこそ、大きな喜びが得られるものだからです。苦しいことから逃げまくっていたら、そういう喜びや興奮を味わうことはできません。 たとえば、学生時代の部活動を思い出してください。 ハードな練習をしたあとでは、その直後に飲むお水がものすごくおいしく感じませんでしたか。ただのお水、しかも学校の水道水でもです。それにもかかわらず、苦しい練習を終えたあとには、私たちは「うわぁ~、うまい!」とただの水でも心の底から喜びを感じるのです。 受験勉強もそうですね。 眠い目をこすりながら、化学式を覚えたり、英単語を覚えたりするのはとても苦しいことではあるものの、そういう苦しさを乗り越えて頑張るからこそ、合格発表のときには心から「やったぁ!」と快哉(かいさい)を叫ぶことができるのです。 いろいろな宗教で、あえて苦しい修行をさせるのはどうしてでしょうか。おそらくは、本当の意味での心理的な喜びや興奮を得るためでしょう。苦しいことを乗り越えてこそ、恍惚感を得るほどの喜びがあるのです。 最近の人は、とにかく少しでも苦しそうだと思うと最初から逃げてしまいます。 そういう生き方をしているので、人生に喜びを感じられにくくなっているのではないでしょうか。 カリフォルニア大学のキャサリン・ネルソンは、 「子育ての苦しさと喜び」というタイトルの論文を書いているのですが、子育てはとても大変ではあるものの、大変な思いをするからこそ、わが子が立ったり、歩いたりするのを見ると、これ以上はないという喜びを感じることができると述べています。 最近の若い人は、 結婚なんて面倒くさいだけ、 育児なんてつらいだけで絶対にやりたくない、と考えているのではないかと思います。 ですが、 「つらいだけ」というのは必ずしも正しくありません。つらいからこそ、うれしさもあるのです。その点を忘れてはいけません。 実際に子育てをしてみるとわかるのですが、自分の子どもの笑顔を見ると、つらい気持ちなどいっぺんに吹き飛びます。 そういう気持ちというものは、 親になってみないとわかりません。 世の中の出来事というものは、苦しいように思えても、苦しさだけではなく、喜びもちゃんとあるものです。 仕事でも、結婚でも、子育てでも、苦しいからこそ、喜びもあるのだということはきちんと理解しておくべきでしょう。