「サイバー捜査の転換点」 誤認逮捕相次いだパソコン遠隔操作事件 警視庁150年 134/150
ウイルスに感染したパソコンが遠隔操作されて犯行予告を送信し、知らぬ間に犯人に仕立て上げられる―。平成24年、インターネット掲示板に殺害予告を書き込んだなどとして、警視庁など4都府県警は男性4人を逮捕した。しかし、「真犯人」を名乗る人物による犯行声明があり、誤認逮捕であることが発覚。男性らのパソコンは掲示板上でソフトをダウンロードしようとした際にウイルスに感染し、遠隔操作されていた。 ウイルスは感染したパソコンから消滅する仕様だったが、米国企業のクラウドサービスが犯行に利用されていたため、警視庁は捜査員を米連邦捜査局(FBI)に派遣。犯行予告は米国行き航空機の爆破予告といったテロを想起させるものもあり、交渉の末、FBIの協力を受け、サーバーに保管されていたウイルスデータを異例の早さで提供を受けた。サイバー捜査官らが大量の記録とともに徹底的に解析した。 真犯人を名乗る人物は、「ゲームのご案内ですよ」などと、ウイルスデータを入れた記憶媒体の隠し場所についてパズルを解読させる形式で報道機関などにメールを送信。江の島(神奈川県藤沢市)で首輪に記憶媒体が付いた猫が見つかり、防犯カメラ映像から浮上したIT関連会社社員の男を逮捕した。後に懲役8年の実刑が確定した。 サイバー犯罪の国際共同捜査と防犯カメラ捜査の両面から証拠を積み上げ、真犯人の摘発に至った。だが、当初、誤認逮捕が相次いだ事実は重く、捜査を担当した捜査員は「日本警察のサイバー捜査において反省や教訓が大きく、転換点となる事件だった」と振り返った。(橋本愛)