「過労死等防止対策推進法」成立10年、3度目の“大綱”見直し前に超党派議連が総会 出席者「実効性のある対策必要」
出席者からは国際条約への批准求める声
総会ではつづいて、出席者からの意見聴取が行われた。 過労死弁護団全国連絡会議の代表幹事で弁護士の川人博氏は「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃」を定めた国際労働機関(ILO)190号条約に批准するよう主張。 「ハラスメントの被害者が相談窓口を利用したのに対応されなかったという例や、相談窓口に通報したことで、よりひどいハラスメントを受けたという事例が非常に多い。 日本も190号条約に批准し、ハラスメントを正面から禁止する法律や、企業がハラスメントの禁止を重視するような体制を作ることが求められるのではないか」
推進法制定から10年「これまで以上に実効性のある対策必要」
また、全国過労死を考える家族の会の代表世話人、寺西笑子氏は「推進法の制定から10年が過ぎ、これまで以上に実効性がある対策が必要だと思います」とコメント。 「私たちは大綱の見直し過程で、推進法の4つの枠組み(調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の支援)以外の内容についても、労働時間の自己申告制をなくすことや、ハラスメント防止法の制定、コンプライアンス対策の義務化などを訴えてきましたが、枠組み以外の内容はなかなか反映されません。 推進法の第3条には『調査研究を行うことにより、過労死等に関する実態を明らかにし、その成果を過労死等の効果的な防止のための取組に生かすことができるようにするとともに、過労死等を防止する』と明記されています。 また、附則も『検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする』としていますから、ぜひ必要な措置を講じていただくことを強く要望します」(寺西氏) 出席者からは他にも、労基署・労働局の人手不足を解消してほしいといった声や、若年層や公務員の過労死対策を求める意見があがった。 また、総会に出席した家族会や弁護団、国会議員のメンバーの多くが、推進法の制定後も過労死する人が増加している現状の改善を訴えた。 推進法が目指す「過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現」のために、7月の大綱見直しのみならず、将来的な法整備も含めて活発な議論が行われることを期待したい。
弁護士JP編集部