森永製菓のゼリー飲料 羽生九段が愛用し将棋ファンから認知拡大
実際に協賛をしたのは、第71期王将戦の七番勝負が始まる22年1月9日から。この七番勝負は渡辺明王将に藤井聡太竜王が挑戦する注目対局だった(称号はいずれも当時)。結果は藤井竜王が4勝0敗で勝利。五冠を達成した。 将棋のタイトル戦では棋士がとる昼食やおやつのメニューが新聞やテレビで取り上げられることも増えた。藤井五冠(現・八冠)の人気が高まるにつれて注目度はさらに上がった。 23年10月には、日本将棋連盟の会長に就いた羽生善治九段がCMに登場した。協賛を進める中で、羽生九段がinゼリー ブドウ糖を愛飲していることを知り、一歩踏み込んでCMを依頼した。 脳のエネルギー源という特徴が脚光を浴び、受験生の間でもinゼリー ブドウ糖の人気に火がついた。inゼリーのおかげでテストを乗り切れたというSNSの投稿が拡散し、24年初めの受験シーズンには品薄になったとネット上で騒がれた。 4因子のレーダーチャートを見ると、森永製菓は前回と比べアウトスタンディング(卓越性)やイノベーティブ(革新性)が伸びている。アウトスタンディングでは「他にはない魅力がある」の項目が伸び、イノベーティブでは「時代を切りひらいている」や「勢いがある」の項目が伸びている。明らかに菓子やアイスクリームの老舗ブランドという従来の印象とは異なる。
森永製菓は「2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります」というビジョンを掲げる。少子高齢化や地球温暖化による極端気候などで、体の健康を気にする人は従来より増える。食で人を元気にするために同社が果たす役目があるとにらんでのことだ。一口食べればくつろいだ気分になれる菓子で「心の健康」を支えることには長年取り組んで来た。今度は「体の健康」も訴求してinゼリー事業をさらに伸ばす狙い。その発信に力を入れたことが森永製菓のブランドイメージを変えつつある。 ●業務スーパー、セブンに迫る 森永製菓が用途の横展開を考える中でバズりやすいテーマにたどり着いたのに対し、得意分野を深掘りすることで、SNSとの共生に成功しているのが、神戸物産だ。 神戸物産がフランチャイズ展開する食品スーパー、業務スーパーのランキングも上昇している。83位(BJ2022)、57位(BJ2023)と上がり、今回は29位だ。USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)やニトリより上位、そしてセブン-イレブンに迫る位置にいる。 業務スーパーの特徴はイノベーティブとアウトスタンディングが高いこと。しかも、この2因子が年を追うごとに高まっている点だ。イノベーティブでは「いま注目されている」が高く、アウトスタンディングでは「他にはない魅力がある」が高い。 神戸物産はナショナルブランド商品に加え、海外から1600以上のアイテムを直輸入し、国内グループ工場などで約370アイテムのプライベート商品を製造してフランチャイズ店に供給している。低価格であるのもさることながら、競合店にない商品が店頭に並ぶ。それこそが「他にはない魅力がある」の評価を高める要因だろう。その代表格が「『世界の本物』を直輸入!」と銘打つ商品群だ。 沼田博和社長が現在の役職に就いたのは12年。翌年に日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の交渉が始まった。関税が撤廃・削減されれば世界各地から代表的な食品を輸入でき、神戸物産のビジネスを大きく広げられると考えた。当時は50代以上のシニア層がお客の中心だったが、若い家族の来店を増やせるチャンスになるとみた。 ●代わり映えしない日常を明るく 沼田社長は、すぐに海外に住んだことがあるスタッフの増員に動いた。 新しいスタッフからは現地の食文化を基にユニークな提案が相次いだ。オランダ人スタッフからは1.8kgの冷凍アップルパイ。日本の家庭では冷凍庫がいっぱいになりそうなサイズだ。以前なら商品として扱うのをためらう提案だが、スタッフの熱意とコストパフォーマンスの高さを評価して輸入に踏み切り、今では人気商品に育った(秋冬限定商品)。