「やるか、やられるか」の極限状態…自らの人生がかかった囚人のジレンマが暴く”合理的判断”の「最適解」
最善の選択は?
ほとんどの場合で、関係者全員にとっては、協調的な行動が最善の選択肢になる。しかし問題は、ほかの全員が協力した状況では、その状況を利用すれば誰もが個人的にはさらに大きな利が得られることにある。 要するに、他人が協力するか否かに関係なく、個人にとっては、非協力的な態度がつねに最善の選択なのである。 嘘をつかれるぐらいなら、嘘をついたほうがいい。ほかの者が誠実なときは?それでも嘘をついたほうがいい。そのため、非協力が「支配戦略」になり、互いに非協力的になることで「ナッシュ均衡」と呼ばれる安定した状態が成立する。不利益を被ることなくこの安定状態から逃れられる者はいない。 囚人のジレンマのパラドックスは、個人の合理性と集団の合理性が相反する様子を示す点だ。誰もが個人にとって合理的となるようにふるまうと、集団にとっては最適でない結果が得られる。協力で得られるはずの果実は、取り逃がされる。 『「資源枯渇・高速道路の渋滞・核兵器所持」には人類のヤバすぎる心理が共通していた!…まさに人類の“醜さ”を表した「集団行動の問題点」』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭
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