ビットコイン、ゴールデン・クロスが近づく──米国債利回り上昇にまつわる懸念は杞憂か
ビットコイン(BTC)が7万ドルの突破に失敗したことで、アナリストたちはその理由探しに忙しい。一部のアナリストは、米国債利回りの上昇が続けば、ビットコインの下落が長引く可能性があると懸念している。 だが懸念は過剰反応の可能性があり、ビットコインの最もレジスタンスが少ない経路は依然として上方向にあり、この先で待ち望まれている「ゴールデン・クロス」の価格パターンと一致している。 米国債10年物の利回りは、チャート作成プラットフォームのTradingViewによると、21日に200日単純移動平均を上回り、当記事執筆時点で3カ月ぶりの高値となる4.26%となった。9月18日にFRBが金利を0.5%引き下げた後、利回りは0.6%上昇した。 いわゆる「リスクフリーレート」の上昇で、債券は魅力的なものとなり、暗号資産やテック株といった比較的高いリスクを伴う資産から資金が移動することが多い。興味深いことに、ビットコインは21日に7万ドル近くで上昇が止まり、6万7000ドルまで下落した。 ビットコインを「ナスダックETF」と表現することが多い匿名のアナリスト、The Great Martis氏は、債券利回りが上昇するなか、リスク資産にとっては「パーフェクト・ストーム(巨大暴風雨)」が到来すると見ている。 他の複数のアナリストは、利下げ後の債券利回りの上昇を政策ミスのサインと見ており、景気後退ではない状況で実施された直近の0.5%の利下げを、1967年の時期尚早な金融緩和と比較している。当時、FRB(米連邦準備制度理事会)は労働市場の逼迫を前に利下げを行い、広範なインフレへの道を開いたが、結局、数年後には不況に陥った。 今回の懸念はおそらく、予想を上回る9月の雇用統計とインフレデータによるもので、FRBの利下げ継続の期待が損なわれ、利回りへの上昇圧力が強まっている。
TSロンバードは反対意見
ロンドンを拠点とするマクロ経済調査会社TSロンバード(TS Lombard)は、こうした見解に反対している。 「中央銀行は、政策は引き締め的であり、徐々に利下げしたいと考えている。雇用に問題があれば、迅速に利下げを行うだろう。雇用が回復すれば、利下げ幅は縮小する。2カ月前、債券市場は政策が後手に回る可能性を強く織り込んでいた。だが、今は景気後退のリスクは消え、利回りは上昇している。これはリスク資産の弱気相場ではなく、FRBが失敗したことを意味するわけでもない」と、TSロンバードのグローバル・マクロ部門マネージング・ディレクター、ダリオ・パーキンス(Dario Perkins)氏は10月17日に顧客向けメモで述べている。 「もし誰かがミスしているとすれば、それは『政策のミス』という見方に固執している人たちだ。おそらく彼らは、当局が何をしようと関係ない」 メモは、FRBの利下げは、複数の理由から1967年のようなインフレを引き起こすことはないだろうと説明している。一方で、最近の米国債利回りの上昇は、過去の「不況ではない状況での利下げ」と一致していると強調した。 上図は、過去の景気後退期以外の金融緩和局面における最初の利下げ後の12カ月間の米国債10年物利回り推移を示している。 1984年を除いて、最初の利下げの後、利回りは上昇している。つまり、今起きていることは驚くべきことではなく、リスク資産から債券への大幅な資金流出にはつながらない可能性がある。 また、FRBによると、景気刺激にも引き締めにもならない中立金利は2.5~3%であり、これは現在のFF金利(基準金利)4.75~5%の範囲を2%下回っている。 つまり、今回の利下げは必ずしも政策ミスではなく、FRBは「たとえ経済が回復基調にあっても大幅な金利引下げを行うことができる」とパーキンス氏は述べた。 注目すべきは、名目および実質利回りが上昇しているにもかかわらず、伝統的な安全資産である金が史上最高値を更新し、ビットコインのような価値の保存手段と見なされる資産に強気サインを送っていることだ。