遭難防止へデジタル化 オンライン登山届やWi-Fi実証実験
今年初めて迎える国民の祝日「山の日」(8月11日)に向け、オンラインによる登山届「コンパス」の普及やWi-Fi(無線LAN)活用など、登山環境の“デジタル化”が一気に進みそうです。先月末には長野県と日本山岳ガイド協会の間で「コンパス」活用の協定を締結。安全な山岳観光への試みがスタートしました。 【写真】入山前遭難につながりやすい3要素「BKG」とは? また、登山の動機の目安になる山岳の難易度を示した「グレーディング」も長野県などが設定。多角的な登山環境の整備が注目を集めています。
スマホやPCから登山計画を提出OK
「コンパス」は日本山岳ガイド協会(山岳ガイド1800人で構成・東京)が運用するオンラインによる登山計画書受理システム。すでに長野県警、岐阜県、神奈川県など10道府県・県警と協会が利用の協定を結んでいます。登山者が登山の前にスマートフォンやパソコンから氏名、住所、登山の行程、緊急連絡先などを記入して発信すると関係県などが認識でき、遭難などの事態に素早く対応できます。 下山の際も、登山者はその旨を発信しますが、予定より7時間たっても下山の発信がないときは緊急連絡先として記載してあった家族らのもとへ「下山していない」と連絡が行きます。そこで家族らが本人に連絡を取り、下山したかどうか確認。連絡が取れないときは遭難の疑いも含め対応することになります。 運用開始した2013(平成25)年からこれまでに全国で約5万件の利用があり、うち山岳県の長野県内での利用が1万3000件ほどと3分の1近くを占めました。
長野県警がすでに協定を結んでいたのに加え、今回、長野県も「コンパス」活用協定を締結したのは、昨年制定した「長野県登山安全条例」により今年7月1日から遭難発生のおそれが高い160以上の「指定登山道」について登山計画書の提出が義務付けられるため(罰則なし)。迅速な対応ができる同協会の「コンパス」で情報を共有する態勢を取ることにしました。 指定登山道を含む長野県内の山岳地域は志賀・苗場、戸隠、上信国境、北アルプス、八ケ岳、奥秩父、御嶽山、中央アルプス、南アルプスの9山域です。 また、日本山岳ガイド協会は、北アルプスの涸沢(からさわ)、槍沢、横尾など5か所にWi-Fi設備を設けて登山者が活用できるよう、7月ごろから実証実験をすることを明らかに。登山の安全対策がこれら最新デジタルシステムで情報化されることになります。