遭難防止へデジタル化 オンライン登山届やWi-Fi実証実験
ホームページに山ごとの難易度紹介
一方、長野県と県山岳遭難防止対策協会は県内の登山102ルートについて体力度と登山道の難易度で評価した「信州 山のグレーディング」を2014年に導入。県のホームページなどで公表し、登る予定の山が自分の体力に合っているか、コースの技術的なレベルはどのくらいかが一目で分かり、山やコースの選択に無理がないか判断しやすくなりました。 例えば北ア・涸沢からの北穂高岳はA~Eまで5段階の技術難易度で2番目に難しいD(登山道は厳しい岩稜や不安定なガレ場などがあり、転落・滑落などの危険個所が多い。技術・能力面では岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力などが必要)で、体力も10段階のうち上から4番目のランク7に設定されています。 グレーディングは長野県の提案で周辺の県も昨年実施。新潟が79ルート、山梨123ルート、静岡は82ルートを設定し、広範囲な山岳地帯で山の情報を利用できるようになりました。
罰則より「提出しやすい環境づくり」
こうした対策は快適な登山のためと同時に、遭難防止が大きな狙い。長野県によると、県内の山岳遭難は最近4年連続過去最多を更新し、2013年の遭難件数は300件(遭難者328人、うち死亡・行方不明74人)で、2014年も272件と高水準。これまでは受け身になりがちだった遭難救助や安全啓発を、登山者の意識的な参加も期待する総合的な対策として展開する段階を迎えたと言えそうです。 長野県の阿部守一知事は「登山計画書については罰則を設けるか論議があったが、罰則で縛るのではなく、計画書を出しやすい環境を整えることが適切ではないかという方向になった。山のグレーディングにも取り組み、行政と登山者のコラボで安全な山岳観光を形成していく。そこに意義がある」と話していました。また、日本山岳ガイド協会の磯野剛太理事長は「コンパスのシステムは他の機能も持てるよう、いずれ進化させていきたい」としています。 第1回「山の日」記念全国大会は8月10日から2日間、長野県の松本市で開き、11日には上高地で記念式典や音楽演奏などを予定しています。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説