大阪・覆われていく「旧新歌舞伎座」解体進み最後の雄姿
工事用パネルで覆われていく大阪市中央区の「旧新歌舞伎座」THE PAGE大阪
「見えへんようになったきたねぇ」。大阪市中央区難波付近を歩いていると、前を歩いていた女性がぽつりとつぶやき見上げた。つられて見上げると、お城のような立派な和風の建物。なるほど、数々の時代劇公演などを楽しめた、あの「新歌舞伎座」だった建物が工事用パネルで覆われていた。
数々のスターの「座長芝居」が行われていた
歌舞伎をしない新歌舞伎座と、稼動していたころはよく言われていた旧新歌舞伎座だが、杉良太郎など数々の映画スターや歌手を中心とした「座長芝居」などを月替わりで公演しており、常に人が集まっていた。近くには高島屋などの百貨店、古くはプロ野球・南海ホークスが本拠地とした大阪球場(現・なんばパークス)、足を伸ばせば大相撲春場所でおなじみの大阪府立体育会館も近いという立地だ。 公演時は、多くのファンが列をなしたり、お目当てのスターが通ると、観劇にきた女性らの黄色い声援が響くなどした。だが、老朽化などを理由に2009年6月に閉館。新歌舞伎座は、大阪市天王寺区上本町の近鉄劇場跡地へと移転した。2012年に冠婚葬祭大手のベルコが跡地を買収。結婚式場とホテルなどの複合施設の建設を計画などとしているが、主だった工事の進行はこれまで外観からは見受けられなかった。
住民ら「寂しい」「早く何かできれば」の声
日に日に工事用パネルで覆われている旧新歌舞伎座。「近所の皆様へ」と書かれた工事状況を伝える案内板には「客席部分解体」「重機搬入」といった文字が多く見受けられる。 以前、観劇したことがあるという女性(70)は「杉(良太郎)さまを観にきたのは今でも覚えている。この建物自体が、なんか他の県から来る友達に『すごいやろ』って自慢してたんよ。(表示板に)『解体』って書いてあるから、なんか寂しいわ」などと話す。 一方、近くに住むという同区の男性(38)は「ずっと閉鎖したままの状態やったんで、早く新しいものを建ててほしいですね。この前(4月)ここで『火事騒ぎ』があったんです。結局は、工事によって出た砂煙が火災の煙に見えて、まちがってたと消防士が言ってたんでホッとしたところやった。そういう心配とかをするよりかは、すごくいい場所なんで、早くなにかできてくれれば。けど、昔の彼女がジャニーズの公演?でここへ来て迎えにきた思い出とかもあるよ(苦笑)」などと話していた。 だんだん姿が見えなくなってきたからか、多くの通行人らが手持ちの携帯電話のカメラでその姿を写す光景が多くみられる。長年、親しまれた施設だけあって、多くの人に、それぞれの「楽しい思い出」があるのかもしれない。