第1シードの佐賀北を倒したナインをたたえる伊万里の真﨑貴史監督（右から3人目）

　◆第106回全国高校野球選手権佐賀大会3回戦　伊万里6―3佐賀北（16日、さがみどりの森球場） 　ノーシードの伊万里が会心の試合運びで第1シードの佐賀北を撃破した。真﨑貴史監督（35）は「特別な思いを持っていました」と明かした。佐賀北が2007年夏に全国制覇し、甲子園に「がばい旋風」を巻き起こした時のマネジャー。あの夏は記録員としてベンチに入っていた。以後大学に進学し、卒業後は指導者の道へ進んだ。21年から伊万里を率いて4年目。初めて夏の大会で相まみえた母校との一戦でもあった。 ■【写真】マネジャーの願いが込められた「倍返し」の千羽鶴を前にガッツポーズする2年生3投手 　「特別な」にはもう一つ、理由がある。初戦敗退した春の佐賀大会は、その佐賀北に延長タイブレークの末にサヨナラ負け。9回までリードしながら、バント処理などのミスが絡んだ。九州大会に出場した佐賀北の強さを認めた上で、リベンジを期して「やられたらやり返す！～100倍返しの夏～」をテーマに掲げ、守備から鍛え直した。試合を想定して27回連続でアウトになるまでノックを終わらない練習も行った。真﨑監督が述懐する。「一つのアウトを取ることにこだわろうと…。設定した時間内にアウトを取れないと、一からやり直しです。指導者人生で、あんなにノックを打ったことはありませんでした」。午前10時半に始まったノックは昼休みを挟んで午後7時前まで続いた。

あのドラマをチームで視聴

　成果は出た。この日の試合では、コロナで登録選手のうちレギュラー2人を含む計3人を入れ替えるアクシデントに見舞われながら、選手は目まぐるしいポジションの変更にも対応。加えて2年生3投手による継投で、8回途中から遊撃手の岩永太郎がマウンドに上がったため、スタメン三塁手の山口哲平主将（3年）が最後はショートを守った。27個目のアウトとなるゴロを落ち着いてさばいた山口は「あのノックのおかげで、この夏はしっかり守り切れています」と胸を張った。 　今春の遠征の際にはテレビドラマ「半沢直樹」をチームで視聴したことで、部員たちは練習中だけでなく、試合中も決めぜりふの「倍返し」を口にするようになったという。春の悔しさを晴らしての8強入り。佐賀北戦を大きな山と位置づけて「みんなで主役になりなさい」との言葉で選手を送り出した真﨑監督も「頼もしい」を連発した。準々決勝の相手は昨夏代表の鳥栖工。18年春の選抜大会以来の甲子園を決めるまで、伊万里の「倍返しの夏」は終わらない。 （西口憲一）