不登校の原因・きっかけ ~最新統計から見えてくるもの~【専門クリニックから見た最前線】
◇不登校関連研究による裏付け
これまで見てきた統計データや症状の分析から、不登校の背景に精神疾患が存在する可能性が示唆されました。この仮説は、実際の臨床研究や疫学調査によってさらに裏付けられます。以下に、国内外の研究結果を紹介し、不登校と精神疾患との関連性をより具体的に示していきます。 日本における不登校と精神疾患の関係に関するデータは限られていますが、国立国際医療研究センター国府台病院の研究では、不登校児童の多くが広汎性発達障害(PDD)(≒自閉スペクトラム症)、不安障害、注意欠如・多動性障害(ADHD)、適応障害、気分障害などの診断を受けています。特に不安障害、気分障害≒うつ病、適応障害との関連が強く、不安障害と診断された児童生徒の66%、同じく気分障害、適応障害ではそれぞれの83%、PDDの26%が不登校を呈していました[6]。 国際的な研究でも同様の傾向が見られます。例えば、Bernstein(1991)やMcShane et al.(2001)の研究では、不登校の若者の約50%が不安障害の診断基準を満たしていました[7][8]。また、Bools et al.(1990)の研究では、深刻な学校出席問題を持つ100人の子供の半数が精神障害の基準を満たしていたことが示されています[9]。 さらに、Berg et al.(1993)の研究では、1学期の40%以上を欠席した子供の半数が精神障害の基準を満たしていました[10]。McShane et al.(2001)の研究でも、受診した不登校者の約50%が抑うつ障害と診断されています[8]。 インドのAsha Hospitalで行われた研究でも、不登校を主訴として来院した児童生徒の91%に何らかの精神疾患が見られ、うつ病性障害が36.4%、不安障害が18.2%、行為障害が15.1%、残りは多動性障害、精神遅滞、双極性障害であったと報告されています(Karthika & Devi, 2020)[11]。 特に上記のAsha Hospitalでの研究結果は、筆者の出雲いいじまクリニックのデータとも一致しています。当院を不登校を主訴に受診した児童生徒の98.5%に何らかの精神疾患や発達障害が見られ、うち33.1%がうつ病、29.2%が不安障害、さらに背景にグレーゾーンも含めた発達障害傾向が52%という結果でした[12]