大型バス横転事故の調査報告が公表!! 事故から学ぶバスと乗用車のブレーキの違いとは!?
■対策
適切な指導監督、および運行管理が必要で、初任運転者に係る自己流の危険な運転を防止するとともに、運転者の過去の運転経験を踏まえ、運行経路に潜む危険を理解させる適切な運行前指示が求められる。 本調査報告書は事業用自動車事故調査委員会によって事業用自動車事故、および事故に伴い発生した被害の原因を調査・分析し、事故の防止と被害の軽減に寄与することを目的として作成している。よって事故の責任を問うために行われたものではないのは、海難審判や鉄道航空事故の調査と同じだ。
■記者のオピニオン
同報告では、運転者の誤認識として「乗客に乗り心地が良いと思ってもらえる運転を心がけて、フットブレーキによるスムーズな減速を選択した。大型貸切バスの運転経験年数が短い運転者にとって、過去に経験のない急カーブと急勾配の連続した道であった。 フェード現象に関する知識はあるが他人事で、フットブレーキを踏めばいつでも止まれるといった誤認識があった。フェード現象については教習所でも習っていて、先輩運転者からフットブレーキを使い過ぎると効かなくなるという話は聞いていたが、自分がそうなるとは全く思っていなかった。」としている。 大型車のブレーキシステムは乗用車の油圧式のものとは異なり、重量のある車両を確実に止めるため圧縮空気を利用したエアブレーキを採用している。ブレーキの基本的な仕組みとしては油圧も空気圧も変わらない。 これらはブレーキを踏み込む力を補助してくれる倍力装置が組み込まれており、乗用車であればエンジンを切ると倍力装置は効かなくなる。エンジンをかける際にブレーキペダルを踏み込むが、エンジンがかかるとブレーキペダルはさらに奥まで自然と踏み込めるようになる。これが倍力装置が効いた証拠だ。 大型車はこれを圧縮空気で、さらに大きな力を得るようになっている。その代償として圧縮空気を作り出すコンプレッサーや圧縮空気をためておく「空気ダメ(タンク)」が必要になる。よって大型車には空気圧を表示するエアゲージのメーターがある。フットブレーキを短時間に何度も踏む(これをバタ踏みという)と空気がなくなりブレーキが効かなくなる。 逆にずっと踏み続けると空気はなくならないが、ブレーキが過熱してピストンを押しているブレーキフルードが沸騰してホースの中に気泡ができ、圧力がかかっても気泡を押しているだけで結果としてブレーキが効かなくなる。これをベーパーロック現象というのは教習所で習ったはずだ。 そこまで至らなくても、過熱により耐熱温度を超えてしまい、摩擦材が分解してガスとなり、まさかの潤滑剤の役割をしてしまうことをフェード現象というが、これも習ったはずである。本件はフェード現象により制動力を失った結果だが、摩擦による制動は長時間かつ連続して使用することによるリスクが大きいことは乗用車を運転する際にもぜひ知っておくべきだ。