「山津波」集落のみ込む 輪島・町野町、家つぶれ流木大量
●「心が折れても生きるしか」 「山津波」とも呼ばれる土石流の猛威を見せつけられた。奥能登を襲った豪雨で、住民3人の犠牲が確認された輪島市町野町。23日、現地の集落に足を運ぶと、押しつぶされた家屋がたたずみ、至る所に流木が積み重なっていた。「もう心が折れそう」。能登半島地震からの復興を目指して進んできた住民は途方に暮れていた。 【写真】大人に交じって泥かきをする子ども(手前)=23日午後3時10分、輪島市町野町粟蔵 住民によると、町野町では土石流が起きたとみられ、山裾の集落は土砂や濁流にのみ込まれた。 「目の前で家が流されてったんや。ここの地形も変わってしまった。おとろしかった」。町野町南時国の大和寿子さん(78)は声を震わせた。高台にある大和さんの自宅から集落を見下ろすと、基礎ごと流された家には、おびただしい量の木が流れ込んでいた。 大和さんによると、集落は元日の地震でも被害を受けたが、倒壊を免れた家屋が比較的多かった。「みんなで『さあこれから家を直して、頑張らんなん』と励まし合っていたのに。あんまりや」 地震で被災しながら、休まず営業を続けていた町野町唯一のスーパーマーケット「スーパーもとや」は近くの川が氾濫し、濁流にのまれた。町野町粟蔵の店舗に入ると、壁や柱に2メートルほどの高さまで泥水につかった跡が残っていた。出入り口のガラスには流木が突き刺さり、流れの激しさを物語っていた。 社長の本谷一知さん(46)は「また商売はやりたいが、どうなるか分からない。心が折れそうだが、折れていても生きていかなければいけない」と語った。復興の道半ばで、またも大災害に見舞われた被災者。かける言葉が見つからなかった。(社会部・中出一嗣)