テクノロジーが街の立地を変える? トヨタが打ち出す「コネクティッドシティ」とは
「やってみながら考える」大変革の時代への協業
トヨタ自動車という会社が、これまで何をしてきた会社なのかといえば、代表的なモノづくり企業であった。トヨタ生産方式(TPS)という「無駄を徹底排除」する手法によって「生産効率と資本効率と製品品質」の3つを同時に向上させる手法で、世界トップの自動車メーカーになった。文化としても自前主義を強く持ち、外注化する技術は必ず内製可能にしておき、モノづくりのキーファクターの主導権を死守してきた企業風土である。 そのトヨタのトップが「私たちが求める未来は、トヨタだけでは創ることができません」と公式に発言することの意味は重い。 「競争と協調の時代」そう新たに名付けられ、何が正解か分からない大変革の時代に、どうすべきなのかというトヨタの答えは「やってみながら考える」という前代未聞の領域に突入するのだ。 さて、そうした未来へのトライアンドエラーを強力に推進するために、トヨタはパナソニックとの合弁会社「プライム・ライフ・テクノロジーズ株式会社」を設立する。
新時代の街作りへのトヨタのポリシーは「自由で安心快適なモビリティ社会」。パナソニックのそれは「くらしアップデート」である。 それぞれが持ち寄る要素は以下のようになる。 【トヨタ】 ・e-Pallet ・様々なモビリティサービス ・モビリティサービスプラットフォーム(MSPF) 【パナソニック】 ・IoT家電・設備 ・くらしにまつわる様々な空間 ・Home X
さて、ご存知の方は多いと思うが、トヨタはグループ内にトヨタホームを持つほか、2016年にはミサワホームを子会社化した。パナソニックにはパナソニックホームズがあり、これらが新会社「プライム・ライフ・テクノロジーズ」株式会社に組み入れられれば、戸建て供給戸数で日本最大規模の住宅メーカーができあがる。 昨今の提携や子会社化の方向を考えれば、もちろん、各社のブランドや特徴を活かす方向で運営されていくだろう。さらに先の記事に書いた通り、街作りのための膨大なパートナーも必要になる。そうした全てに向けて今プロジェクトはスタートした。新しい都市、新しい街はどんなものになるのだろうか? --------------------------------------- ■池田直渡(いけだ・なおと) 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。自動車専門誌、カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパンなどを担当。2006年に退社後、ビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。現在は編集プロダクション「グラニテ」を設立し、自動車メーカーの戦略やマーケット構造の他、メカニズムや技術史についての記事を執筆。著書に『スピリット・オブ・ロードスター 広島で生まれたライトウェイトスポーツ』(プレジデント社)がある