ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン出演の岩崎悠雅、フリー転向で芽生えた新たな意識
2018年に開催された「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」をキッカケに芸能界入りを果たした岩崎悠雅が、2024年1月13日より開幕するミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs立海に海堂 薫役で出演する。 【写真】『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs立海でに海堂 薫を演じる岩崎悠雅 2021年より4thシーズン 青学・海堂 薫役として駆け抜けてきた岩崎に、卒業間近の『テニミュ』の話はもちろん、自身のターニングポイントや影響を受けた先輩俳優について語ってもらった。 ■オーディション参加のきっかけはヘアセットが好きだったから ――岩崎さんは「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」をキッカケに芸能界入りを果たしましたが、もともと俳優業に興味があったのでしょうか? いえ、実はまったくなくて、芸能界は自分とは遠い世界の話だと思っていました。小さい頃は、テレビに映る人たちのことを存在しない作り物の人たちだと思っていたぐらいで。それに、人前に立って何かをするというのも苦手でした。だけど大学生のとき、叔母から「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」のオーディション参加をすすめられたんです。 僕は昔からヘアセットをすることが好きだったので、「JUNON」を読んで参考にしていました。だから、自分もプロの方に髪をセットしてもらって、誰かがその髪型を参考にしてくれたらうれしいな、というぐらいの温度感で応募することにしたんです。 ――芸能界で活動していくことを明確に意識しだしたのはいつですか? ジュノンのオーディション中ですね。審査のひとつに、生配信をして応援してくださる方々とコミュニケーションをとるというものがあったんです。そのときに、「いつも元気をもらっています」、「この配信のおかげで毎日頑張ることができています」といった声をいただいて、人に元気や活力を与えられる存在ってすごく素敵だなと感じて。それがきっかけとなって、芸能界で本気で頑張っていきたいと思いました。 ■安西慎太郎のひと言に受けた影響 ――現在、舞台を中心に活躍されていますが、仕事の楽しさややりがいはどういうところに感じていますか? ダンスも歌ももちろん楽しいですが、やっぱり僕はお芝居が一番好きですね。普段の生活ではなかなか出せない感情を芝居の中では出せたりしますし、役を演じることで僕自身も人として成長できているような気がします。だけど、すごく難しくもあるので、どうやったらうまくなるのかといつも考えていて。何ができたら上手い役者になるんだろうとか、そうやって突き詰めていくことも含めて、すごくやりがいのある仕事だなと感じています。 ――これまで共演してきた方の中で、影響を受けた俳優さんはいますか? この春に劇団「キ上の空論」さんの「けむりの肌に」という舞台に出させていただいたんですけど、そこで主演を務められていた安西慎太郎さんです。安西さんが共演者の方々とお話されていたときに、「気配りや思いやりがある人はお芝居がうまい」と言っていたのを聞いたんです。その言葉が僕の中でずっと引っかかっていたんですけど、公演期間中にはわからなくて…。 でも、先月出演した「2.5次元ナビ!シアターVol.2 ~Show Must Go On~」で、その意味にやっと気づくことができたんです。芝居って、自分の役をしっかりこなせばいいというわけではなくて、相手の役者さんがこの感情でこのせりふを言うために、そのために僕はどんな気持ちでせりふを言えばいいのかとか、そういうところまで考えることが大事で、それが思いやりということなんだなと腑に落ちました。 ――相手のことも考えて、いいパスを出していくということですね。 そうですね。そのときに改めて「お芝居って楽しい!」と感じました。それに、きっと僕はまだまだ知らないことがたくさんあると思うので、そういうことをこれからも知って理解していけたらもっと楽しいんだろうなと思いました。 ■『テニミュ』 は「かけがえのない存在」 ――2024年1月にはミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs立海が開幕されますが、岩崎さん含む、青学(せいがく)キャストは本作で全員卒業となります。 まだ「Dream Live 2024」が控えているとはいえ、海堂 薫としてお芝居ができる本公演は今回が最後になります。本読みをして、稽古に入った今でさえも、油断すると泣きそうになっちゃいますね。今回の立海公演は、青学(せいがく)にとっても今までにない強敵に挑みますし、ストーリー的にも心情的にも役と僕自身がリンクする部分がすごくあります。 ――これまで、海堂 薫という役にはどのように向き合ってこられたのでしょう? 海堂はすごくストイックでスタミナがあって、毎日10km走ってトレーニングをしているようなキャラクターなんです。だから、僕もできるだけ毎日走るようにしてきました。あとは、普段の生活の中でも、海堂だったらこう思うだろうな、ということをずっと考えていましたね。 海堂とは、負けず嫌いで努力家なところが似ているなと思っているんです。だからこそ、目の前に壁が立ちはだかっているときや、何かに向けて頑張っているときに、「今、海堂と同じ感情になれている、近づけている」と思うことができて、それが僕にとってモチベーションになっていました。 ――岩崎さんにとって本作は初めての役付きとなった作品でもあります。これまでの期間を振り返ってみて、『テニミュ』はどのような存在になりましたか? かけがえのない存在ですね。本当に何も知らなかった僕に、お芝居とは、役者とは何なのかということを、イチからすべて教えてくれた作品です。歴代の先輩方とのつながりや素敵な仲間との出会い、今後のステップアップとなるチャンスと、本当にたくさんのものをいただきました。すべての人たちへ感謝の気持ちを忘れずに、最後の公演に挑みたいと思っています。ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいです。 ■フリーとして活動することで「視野が広がりました」 ――俳優としてのターニングポイントとなった出来事があれば教えてください。 4月からフリーで活動しているんですけど、俳優としても人としても、それがターニングポイントだったと思います。フリーでの活動で、今まで事務所の方がやってくれていたことを全部ひとりでやるようになって、本当に視野が広がりました。 それに、ひとつのお仕事をするのにも、たくさんの方が裏で動いてくれているんだということを強く実感しています。そういう細かいひとつひとつのことに気づくことができるようになったし、小さなことでも感謝の気持ちを持っていたいと思えるようになりましたね。これまでは、あまり俯瞰で見られていなかったなと。 ――何事も実際に経験してみないとわからないことだらけですよね。 そうですね。でも、同年代のサラリーマンの友達はメール対応やスケジュール調整とかそういうことを毎日やっているんだよなとも思いますし、俳優業ってやっぱり特殊ですよね。例えば、取材や舞台の本番などでも、スタッフさんがお水を用意してくれるじゃないですか。それが普通ではない、当たり前ではないということに、フリーになっていなかったら気づけなかったと思うんです。お水だって、誰かが買ってきてくれるからあるわけですし。フリーを経験したからこそ、そういうことに目を向けられるようになったので、本当によかったなと思っています。 ■プライベートではショートドラマの脚本を執筆中 ――プライベートでのリフレッシュ方法についても教えてください。 基本的にインドアなので、休みの日は家から出ないんですけど、最近はレッスンもかねてカラオケによく行っています。発声練習をしたり、Mrs. GREEN APPLEさん、優里さんなどの流行りの曲を歌ったり。あとは、今まで歌ってきた“テニミュ”の曲を、今だったら当時よりもどれぐらいうまく歌えるかというチャレンジもしています(笑)。 ――では最後に、年内中にプライベートでやりきりたいことを教えてください。 実は僕、フリーになってからショートドラマの脚本を書いているんです。でも、初めて書いているのですごく難しくて途中で手が止まってしまっていて。だから、年内中に書き終えたいです。 もし撮影をするならここのスタジオがいいなとか、この場所を借りるならどれぐらいの費用がかかるのかとか、そういうところまで考えたりもしていて、すごく楽しいんですよね。もちろん、具体的な公開場所とかキャストとかは決まっていないですし、そもそも皆さんにお見せできる日がくるかもわからないんですけど、いつかそんな日がきたらいいなと思っています。 ◆撮影=八木英里奈、スタイリスト=齋藤良介、ヘア&メーク=田中宏昌、取材・文=榎本麻紀恵