日本の女性ITエンジニア比率が低い理由と解決策
「ロールモデル」の意義
2030年のIT人材不足最大79万人ともいわれるなか、女性ITエンジニアの増加は人材不足解消につながり、それにけん引されてGDPは13%上昇すると予測されています。さらに、多様性の増加により、企業のイノベーションの促進につながり、女性はより高収入な職の機会が増えることにもなる。これまで見てきた一連の動きは、こうした好循環を生み出すための「スタートライン」に立った段階ともいえます。 ■「ロールモデル」の意義 私たちはIT分野のジェンダーギャップ解消を目指し、女子およびノンバイナリーの中高生、大学生・院生に無料でプログラミングを学ぶ場を提供しています。また、国際的なアプリ開発コンセプト「Technovation Girls」の国内支援等もしながら、あらためて感じているのがITやSTEAM分野における「ロールモデル」の必要性です。データを見てもそれは明らかです。 例えば、米マイクロソフトが18年に行ったヨーロッパ12カ国の11歳~30歳の女性1万1570人を対象に実施した調査によると、ロールモデルの存在はポジティブな影響を与えることがわかっています。ロールモデルがいない場合、21%の女の子がSTEMに興味を示すのに対し、ロールモデルがいる場合は2倍の41%が興味を示すといいます。 女性が理系・エンジニア職に進みづらい構造のひとつに「家庭、学校、メディアなどを通して、ステレオタイプがあること」により理系に進学しない、ITエンジニアを志望しなくなり、「理系・ITエンジニアの女性が少ない」ことによりステレオタイプが強化されるという「負のフィードバックループ」の存在があります。それを打ち破るものこそロールモデルの存在であると思います。 特に、小学校、中学校、高校でプログラミング必修化や本格化が始まったからこそ、よりロールモデルの存在を知ることが重要になると思っています。また、女性エンジニアとなってからも、ライフイベントに伴うキャリアの変化に直面しながら、「ロールモデル不在問題」は続いています。今回の「Women In Tech 30」はこのロールモデルの存在を知る機会となり、次世代の女性たちのエンパワーメントにもつながり、格差是正のその先にある「より良い社会」を生み出す契機になるのではないでしょうか。 田中沙弥果◎NPO法人Waffle理事長。NPO法人みんなのコードを経て、19年にWaffleを設立。内閣府「若者円卓会議」委員、経済産業省「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」有識者などを歴任。世界経済フォーラム YGLs 2024選出
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