法哲学の大学教授 もう一つの専門は夜の「スナック」 コロナ禍で気づいた「営業の自由」とは
名物教授訪問@東京都立大学
東京都立大学法学部の谷口功一教授は、法哲学が専門ですが、夜のネオン街の「スナック研究者」としての顔も持っています。「正義とは何か」を議論するお堅い法哲学が専門の教授が、なぜ正反対の世界にあるスナックを研究することになったのでしょうか。最近は若い人や女性たちに、スナックにはまる人が増えています。昭和歌謡がブームとなり、昔ながらの雰囲気のスナックも人気です。スナックの魅力はどこにあるのか、谷口教授に聞きました。 【写真】教授が立ち上げた「スナック研究会」の様子
スナックはカウンターの向こうにママやマスターがいて、お酒を飲みながら会話を楽しむ店です。街角でよく目にするスナックは、減少傾向にあるものの、現在、全国に約5万軒あると言われています。そのスナックを学術的に研究しているのが、東京都立大学法学部の谷口功一教授です。 「ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスは、イギリスのパブやオランダのコーヒーハウスでお酒やコーヒーを飲みながら議論することによって、ヨーロッパの市民社会は育ってきた、と言っています。日本におけるスナックはまさにそういう場所。地域の人が集まってお客さん同士で話をする『夜の公共圏』なのです」 谷口教授は地元のスナックで飲んでいた時、「スナック」という名前の由来が話題になり、調べたことから興味を持ちました。早速、仲間の研究者と9人で「スナック研究会」を立ち上げ、歴史学、哲学、文学、美術史学、政治学、法学などの視点から研究を行いました。「『夜の公共圏』と本居宣長」「スナックと行政―規制対象としての実態と振興対象としての可能性」「日本の宴席と文化」などのテーマで研究報告会を開き、研究の成果を2017年に『日本の夜の公共圏 スナック研究序説』(白水社)として出版すると、大きな話題になりました。現在も多くの取材を受け、全国で講演しています。 ちなみに「スナック」の名前の由来ですが、本来は「軽食」という意味です。酒類のみでなく食事も提供するなら深夜まで営業してよいという法律があり、かつて警察の取り締まりに備えてカウンターにサンドイッチなどを用意したことから、こうした店がスナックと呼ばれるようになったそうです。