定期的な「歯科受診」が介護のリスクを低下させる?米国老年病学会誌に論文
【役に立つオモシロ医学論文】 高齢化が進む日本では、日常生活に介助を必要とする高齢者の数も増加しています。2019年における介護保険の総支出は11.7兆円であり、これは国民医療費の総額44.4兆円の約4分の1に相当します。介護保険サービスを持続可能なインフラとするためにも、関連する支出の削減も重要です。 長生きしたけりゃ最後は噛む力(4)「口の衰え」がフレイルを招く 近年では、口の中の衛生状態と、全身の健康状態の関連性が指摘されており、定期的な歯科受診によって、入院のリスクや介護が必要となるリスクの低減につながるのではないかと考えられてきました。そんな中、定期的な歯科受診と介護サービスの利用状況や介護保険費用の関連性を検討した研究論文が、米国老年病学会誌の24年9月号に掲載されました。 日本で行われたこの研究では、65歳以上で日常生活が自立している8429人(平均73.7歳)が対象となりました。研究参加者に対して、過去6カ月以内における歯科の受診状況を調査して、その後の介護保険の利用状況と歯科受診の関連性が分析されました。なお、分析結果に影響を与え得る年齢、飲酒状況、歯の残存本数などの因子について、統計学的に補正が行われました。 8年間にわたる追跡調査の結果、介護サービスを利用した人の割合は、歯科を受診していない人に比べて、歯科を受診した人で14%、統計学的にも有意に低下しました。介護保険費用の累積金額もまた、歯科を受診した人で低いことが示されました。 特に、虫歯の治療ではなく予防目的で歯科を受診した人で金額が低く、歯科を受診していない人との累積費用の差は1089.9米ドル(約16万円)。論文著者らは「歯科受診による口の中の衛生状態の維持が介護保険に関連した費用の削減に効果的かもしれない」と結論しています。 (青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)