弱小からの脱却。北海道コンサドーレ札幌の快進撃のなぜ?
そして、進藤や菅をはじめとするホープたちにその立ち居振る舞いを介して、成長をアシストしてきたのが1979年生まれの「黄金世代」の2人、小野伸二と稲本潤一の両MFとなる。前者は2014年6月から、後者は2015年からコンサドーレでプレーしている。 けがやコンディション不良もあり、今シーズンはともに1試合ずつ、それも後半途中からピッチに立っただけにとどまっている。それでも、日本代表やヨーロッパの舞台で長くプレーしてきた秘訣を、頼れる背中を介してコンサドーレに伝えている。 チーム最多の5ゴールをあげて快進撃をけん引し、そのなかで4月7日の名古屋グランパス戦で決めた豪快なオーバーヘッド弾が、4月のJ1月間ベストゴールに選出されたエースストライカー、都倉賢がチーム全員の思いを代弁する。 「シンジさん(小野)からは常にサッカーを楽しむ姿勢を、イナさん(稲本)からは日々の準備力といいますか、平凡な毎日が繰り返されるなかで、同じプロセスに対して絶対に手を抜かない姿勢を学んでいます。2人の日々の振る舞いというか、存在自体が僕たちの刺激になっています」 後半戦から発揮されてきた粘り強さと、夏場に加入した元イングランド代表FWジェイ、タイの英雄チャナティップらの活躍もあり、残留を果たしたコンサドーレをさらに上のステージへ引きあげたのが、今シーズンから指揮を執る、「ミシャ」の愛称で親しまれるミハイロ・ペトロヴィッチ監督となる。 サンフレッチェと浦和レッズでも導入された「3‐4‐2‐1」を基軸としながら、攻撃時に「4‐1‐5」へ、守備時には「5‐4‐1」に移行する「可変システム」がいかに革新的だったか。前出の都倉は、全体的な価値観が劇的に変わることを意味する「パラダイムシフト」という言葉を用いながらこう語る。 「スペシャルな監督だと思います。たとえば、最終ラインの選手にあれだけ『ボールを前へ運べ』と言う監督はまずいません。サッカー観や考え方における幅が増えたことで、次に何をやらなきゃいけないかを考えられるし、刺激を受けることで自分たちのなかに深みも出てくる。 いままでのパラダイムシフトじゃないですけど、無知の知というか。どんな状況においても、まったく知らなかったことを新たに知ることが、まずは成長の第一歩になっていると思います。成長へのいいサイクルが、ミシャと出会ったことで自分たちのなかで生まれているのかなと」 攻撃時にはボランチの一枚がポジションを下げて4バックになり、それまで3バックの左右を務めていた福森晃斗と進藤が、積極果敢に攻め上がってどんどんクロスを供給する。昨シーズンの同時期に比べて、得点は11から20にアップ。攻撃は最大の防御とばかりに、失点も19から13に減っている。