これまでの集大成…『光る君へ』が示した「望月の歌」の新たな解釈とは? NHK大河ドラマ第44話考察レビュー
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。三条天皇が息を引き取ったことにより、後一条天皇が即位。ついに道長が最高権力者の座を手に入れた…。今回は、第44話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】柄本佑“道長”の歴史的シーン…貴重な未公開カットはこちら。 NHK大河ドラマ『光る君へ』劇中カット一覧
ついに摂政まで上り詰めた道長(柄本佑)
『光る君へ』第44回「望月の夜」。ついに摂政まで上り詰めた道長(柄本佑)が政治家人生に幕を降ろすこの回で、本作は一つの集大成を迎えた。 冒頭では、道長と三条天皇(木村達成)の最後の攻防戦が描かれる。公卿たちを味方につけ、譲位を迫ってくる道長に対抗すべく、自分の娘を道長の息子・頼通(渡邊圭祐さん)の妻にするよう提案する三条天皇。 しかし、頼通はこれを拒否し、無理やり結婚を推し進めるのであれば、妻・隆姫(田中日奈子)と駆け落ちすると宣言する。惚れた女性に一途なところは父親譲り。 自分もまひろ(吉高由里子)と駆け落ちしようとしていた過去があるからか、道長はそれ以上無理強いはせず、伊周の怨霊により頼通が体調を崩したことにして対処する。まさかこんなところで、伊周の呪詛が役立とうとは…。たしかに伊周の執念は凄まじかったため、当時の人もすんなりと受け入れたことだろう。
気高く清廉な生き方を貫いた三条天皇(木村達成)
万策尽きた三条天皇は自身の息子・敦明親王(阿佐辰美)を次の東宮にすることを条件に譲位した。だが、まもなく病に倒れ、そのまま息を引き取る。死の瀬戸際で「闇だ…闇でない時はあったかのう」と力なく呟いた三条天皇。 彼は、第63代冷泉天皇の第二皇子として生まれた。次の天皇・円融天皇(坂東巳之助)が自身の第1皇子=のちの一条天皇(塩野瑛久)を花山天皇(本郷奏多)の東宮とすることを望んだため、一条天皇より4歳年上でありながら、二十年以上、その東宮として過ごすことになる。 そしてようやく自分の番が巡ってきたかと思いきや、眼病を発症。やがては両目を失って聴力も衰え、それを理由に譲位を迫られる。不遇な人生といえば、それまでだが、三条天皇は簡単に諦めることはなかった。 誰のせいにすることもなく、誰かを呪うこともせず、持ち前の交渉力で道長と渡り歩き、最後も一途に愛した妻・娍子(朝倉あき)に「闇を共に歩んでくれて嬉しかったぞ」と感謝する。なんと気高く清廉な生き方だろう。 道長と覇権争いを繰り広げる中で何かを目論んでいるような表情をすることも多かった三条天皇だが、その心はあくまでも清らかであることを木村達成が巧みに表現していた。