軽度認知症のサイン/医療ジャーナリスト・安達純子
「新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<5> アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)は、物忘れといった記憶障害がサインとなる。たとえば、昨日買って不要な同じ食材を今日も買う。あるいは、財布を置き忘れる。何度も同じことを聞く、話すなどが典型的な症状といえる。だが、アルツハイマー病とは原因が違うレビー小体型認知症では症状が異なるという。 「レビー小体型認知症のMCIは、物忘れの症状はあまりひどくありません。むしろ、空間認識や注意力の低下の症状が出やすい。たとえば、いつも行くスーパーへの道順がわからなくなるといったことです」と説明するのは筑波大学付属病院認知症疾患医療センター部長の新井哲明教授。認知症の診断・治療・研究を長年行い、AIを用いた簡便な診断支援ツールの開発などにも尽力している。 ひどい物忘れがあると「認知症?」と誰もが思うが、物忘れはないのに、いつも通っていた道がわからなくなるなど、レビー小体型認知症特有の症状がある。しかも、空間認識以外にも症状は多彩。 「レビー小体型認知症は、自律神経のバランスも崩れるため、立ちくらみや便秘などの身体症状が見られます。また、意識がしっかりしているときと、ボーっとしているときの波があるのも特徴です」(新井教授)。 認知症の専門医は、患者の言動や症状を見て何が原因の認知症か推測し、それに即した検査を行う。しかし、そうでないと診断は難しい。そのため、新井教授はAIによる診断支援ツールを開発し、実用化に向けた研究を進めている。