口腔がんの死亡率はアメリカの倍! なのに日本人が口に意識を向けないのはなぜ? 口は生命の源である4つの理由
口の強化 #2
口には食べ物を摂取する生命維持としての機能だけでなく、さまざまな役割があるが、日本人は欧米に比べると、口の老化やケアにあまり関心がないという。 【関連書籍】『食事でムセる かみ切れない 口臭が気になる人のための口の強化書』
口への関心の低さと口の大切な役割について、照山裕子氏著、監修來村昌紀氏の『食事でムセる かみ切れない 口臭が気になる人のための口の強化書』(アスコム)より一部抜粋・再構成してお届けする。
口は生命の源
人間は食べ物を口から摂るわけですから、歯や舌、唾液腺などからなる「口腔」(以下、口と表記します)は、体をつくっている源だといえます。 口は、まさに「生命の源」です。 口には、食べ物を噛んだり飲み込んだりするだけでなく、ほかにもさまざまな機能があります。 大きく4つに分けると、次のような機能があります。 ❶生命維持 ❷コミュニケーション ❸力やバランス ❹顔かたち ❶に関しては、生命維持に欠かせない食べ物を体内へと摂り入れる作業は口の役割ですし、口から分泌される唾液には「免疫」機能もあります。 また、「異物を体内に入れない」ことも口の重要な機能であり、食べ物を咀嚼することで「味覚」も働きます。 生命維持の根本を担っているといえるでしょう。 ❷は、言葉を話すことや表情をつくるなどの「感情表現」によって、他人とコミュニケーションすることです。 口の機能が落ちてくると、言葉をうまく「発音」できなくなり、人と会うのがどんどんおっくうになってしまいます。 また、口角を上げてにっこり笑うなど、豊かな表情をつくって、人とのコミュニケーションを円滑にするのも口の大切な役割です。 ❸は忘れがちですが、口は力や体のバランスにも重要な役割を果たします。 たとえば、歯を「食いしばる」ことで全身に力を入れることができ、それによって「姿勢を保持」することができます。 重いものを持つときや力を入れたときに、歯を食いしばったり、口まわりに力が入ったりしませんか? また、運動能力と噛み合わせの関係は、いろいろといわれています。 たとえば、上下の歯でしっかりと噛めている場合と、噛み合わせが悪い場合とでは、直立した場合のふらつきなどに違いがあり、重心がブレやすいことがわかっています。 ❹は、口は「顔かたち」にも影響を及ぼすということです。 たとえば、口が弱くなると、動きが鈍くなることで、口まわりの筋肉が衰えてシワが多くなります。 また、左右どちらかの歯を悪くして、片方だけで噛み続けていると、顔の左右バランスも崩れていきます。 そうして、顔のかたちがゆがんでしまうと、見た目の「イメージ」が悪くなり、❷のコミュニケーションの質を下げたり、噛み合わせが悪くなることで❸の全身バランスにもかかわってきたりして、悪いサイクルに入ってしまうわけです。 このように、肉体的にも精神的にも、わたしたちが毎日を健康に生き、豊かな時間を過ごすために欠かせない機能を持つのが、「口」です。 生命を維持するのはもちろんですが、豊かな社会生活を営むためにも、人間にとって必要不可欠な機能が凝縮されている、それが口なのです。 懸命にリハビリに取り組んでいる私の患者さんたちを見ていると、毎日好きなものを口にすることや、ごくごくと水を飲めることは、奇跡のように思えます。 そんなすばらしい機能を持っていることを当然と思わずに、みなさんにはもっと意識して口を大事にし、いまある健康を一生、保ってほしいと思います。