92歳・樋口恵子「人生100年時代」でも80代以降を健やかに生きるのは至難の業。ヨタヘロしながらも「老い」を幸せに生きる心得
内閣府が公表している「令和6年版 高齢社会白書」によると、令和52年の平均寿命は男性で85.89年、女性で91.94年になる見込みだそうです。年々平均寿命が延び「人生100年時代」ともいわれる昨今ですが、92歳の評論家・樋口恵子さんは「80代、90代を心身ともに健やかに生きるのは至難の業」と語っています。そこで今回は、樋口さんの新著『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』から“ヨタヘロ期”を生きていくための心得を一部ご紹介します。 【写真】樋口恵子さん 「目指すべきは、『死ぬまで幸せに生きる』です。 どんな時もユーモアを忘れず、明るく前向きに歩いていたら、なんとかなるものです」 * * * * * * * ◆幸せな「老い」を生ききるために 人生100年時代といわれる昨今、私たち日本人は、前人未到の長い老後の世界に足を踏み入れつつあります。けれども、80代、90代を心身ともに健やかに生きるのは至難の業。容易なことではありません。 70代はまだしも80代ともなれば、体のあちこちに不具合は出てくるわ、物忘れはひどくなるわ、何をするのもめんどうくさくなるわで、老化道をまっしぐらに突き進むことになります。 いえ、まっしぐらではなく、ヨタヨタヘロヘロと、です。体はゆらゆら、頭はもうろうとしながら、のっそりのっそりと進んでいき、気がついた時にはバタッと倒れていたりします。私は、そんな自分自身の姿をかえりみて、この時期を「ヨタへロ期」と名づけました。 では、ヨタへロ期を無事に生き延びるには、何が必要なのでしょう。 まずは、老いゆく自分を客観的にみつめ、受け入れること。しかし、老いを受け入れたとしても、それに対処する生きる手立てがなくては生きられません。生きるためには、自分が置かれている、あるいはこれから置かれるであろう周囲の状況と、もう少し視野を広げて社会的な状況を知ることが大事です。 それぞれの立場や考えに沿って、そこから「どうすればいいのか」と、生きる手立てを探っていくしかありません。
◆自分の老いを客観的にみつめる なぜなら、70代の人が80代を生きるのは、初めての経験であり、80代の人が90代を生きるのは、やはり初めての経験だからです。 しかも、昔のように、同じ屋根の下に子や嫁、孫がいるわけでもなく、いても遠方に住んでいれば、ほとんど頼りになりません。ふと隣をみれば、何もしない老夫がぼんやりと座っている。このままでは、もしかして老々介護になるのでは?と思うと、心配で夜も眠れなくなるでしょう。 だけど、どんな夫でもいないよりはましで、いずれ一人になるかと思うと、これまた不安がつのるというものです。 不安の原因は、自分の置かれている状況がみえていないからだと思います。しかし幸いなことに、不安になる根拠は、国の機関から出ている統計調査をみれば、だいたい把握することができます。 寿命の長さは人それぞれですが、自分の年齢だと、概ねあとどれくらい生きられるのか、そのうち何年くらいは健康でいられるのか。男性も平均寿命が延びているけれど、女性の一人暮らしは年々増えているから、どのみち一人になる確率が高いことなどがわかります。統計調査は、自分の老いを客観的にみつめるのに役立つのです。
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