雄大な絶景のあとはまさかの断崖! 低山でも山の楽しみが満載の社日山縦走ルポ・後編
山陰のとある町を見下ろす低山の稜線上にある「〝世界〟平」と「〝日本〟台」。前編では、森林浴をたっぷり味わえる尾根道を抜けて、ふたつの絶景スポットを巡りました。 最高標高地点の世界平は、東西に縦走するコースのだいたい中間地点。残りの東半分へ、歩を進めてゆきましょう。 【写真】低山と侮ることなかれの社日山縦走コースを写真で見る(全20枚)
中国地方最高峰の雄大なシルエット
世界平の東も、しばらくは道幅のある森の中を進んでゆきます。アップダウンもほとんどなく、絶景を目にした満足度もあいまって、足取りも軽く。ところが数分ほどで、急に道幅が細くなり、心もとない感じに。 とはいっても、下草が生い茂るのは両脇だけ。道はしっかりしていて迷う危険もありません。 しばらくゆくと、単調な尾根道が左へゆるくカーブ。ここからはちょっとした九十九折に。迂回しながら目の前の急斜面を登ってゆきます。 ここのピークは残念ながら木立の中で、眺望はゼロ。登ったと思ったらこんどは急な下り。足元が木の根で凸凹しているところもあるので、ロープも掴みながら丁寧に。 そして下りきったらまた、尾根道に。今度は市街地とは逆側、稜線の南側の眺望が開けました。 両側になだらかに伸びるシルエットが実に見事。大山です。標高1709m、中国地方最高峰。別名「伯耆富士」とも呼ばれますが、富士山同様、古来から山岳信仰の対象としても崇められてきました。思わず手を合わせてしまいます。 大山は南東方向ですが、南正面には山海が広がっています。あの山々の合間には、かつてたたら製鉄で栄えた奥出雲の秘境です。 少しゆくと、北側の眺望が開けたポイントに出ました。十神山が中海に浮かぶようで、絵になる景色。個人的にはここからの眺めが、この縦走路で一番気に入りました。青空に浮かぶ雲もいい感じです。
安心しきったところにとんでもない急斜面
ここまでで登山口から1時間ばかり。もう行程の3分の2ぐらいは来たはず。予定通り、2時間以内には下山できそうです。ところが、すぐに驚きの光景に出くわします。 相変わらず、道ははっきりしていて迷いようがありません。しかしこの真っ逆さまぶり。社日山、地面は堅いのですが表面は砂状でザラザラ。おそるおそる、トラロープを頼りにしながら下ってゆきます。 振り返ると、ほぼ絶壁。ここが間違いなくこのコースの難所でしょう。眺望ポイントが次々現れるのんびりハイキングコースかと思いきや。しかしこの変化に富んだ展開、悪くありません。急な下りはさらに続きます。 そして再び、細いながらもはっきりした尾根道へ。 難所を越え、ホッとしたのもつかの間。送電線の鉄塔のあるちょっとした広場の先に、再び難所が現われました。 先程よりずっと長いのですが、こちらはトラロープだけでなく、階段がしっかり設置されています。鉄塔のメンテナンスのために整備されたのだと思われます。上からよりも下からのほうが、その急斜面ぶりがよくわかります。