「フランス・オペラの優美さを伝えたい」バンジャマン・ベルナイムインタビュー
オペラ界を席巻しているバンジャマン・ベルナイム。2024年のインターナショナル・オペラアワードで最優秀賞男性歌手の栄誉に輝き、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している当代随一の名歌手がついにファン待望、日本初となるソロ・コンサートに登場する。 【全ての写真】日本初となるソロ・コンサートを行うバンジャマン・ベルナイム そんな売れっ子のベルナイムが、公演の合間をぬってオンラインの共同インタビューに応じた。その様子をお伝えする。 ベルナイムはフランス人だが、残念ながらまだその真価が知られていない時期にドイツ風に表記されてしまい、ベンジャミン・ベルンハイム、ベンジャミン・ベルネームなどと日本語での名前が統一されていなかった。今回の日本初コンサートに向けて、改めて主催が現地のニュース番組やマネジメント会社に発音を確認し、日本語表記を改めたという念のいれようだ。 ただ、この念入りな確認も、ベルナイムの芸術観に触れるとなるほどと思わされる。 このスター・テノールはメトロポリタン・オペラのライブビューイングでもたびたび登場し、『ロメオとジュリエット』、『ホフマン物語』で甘美な歌声を響かせただけではなく、幕間のインタビューでフランス・オペラへの想いを熱く語っている。 「フランス・オペラの優美さ、フランス語の美しさを聴衆に伝えたい」 「フランス・オペラのスタイルは歌手によって違うが、大切なことはフランス語がわからない観客にもその魅力、言葉の美しさを伝えるということ」 とにかく言葉、とりわけ歌詞に対する並々ならぬ意欲が言葉のはしばしにあふれてくる。 「フランス・オペラを歌う際に特に意識していることは?」という質問に対しては「どんな言語のオペラでも、すべては歌詞からはじまる。例えば『ホフマン物語』。作曲したオッフェンバックはドイツ生まれのフランス人、テキストはE.T.Aホフマンによるもの。『ウェルテル』の原作はゲーテ。そしてシェイクスピアの『ロメオとジュリエット』など、テキストは伝えるべき物語をもっている。僕にとって一番重要なのは、音楽や音色を超え、「物語」を伝えること。大切なのは歌詞、いつだって『言葉』、『言葉』、『言葉』!言いたいのは、僕は歌詞と物語を中心にすえ、観客と言葉・歌詞を通して、オペラの物語に誘い、一緒に旅することを望んでいるんだ」と、『ハムレット』のセリフを引用しながら熱く語る様はそれだけでまるでオペラの一場面のようだ。 そんな知性あふれるベルナイムに、今回歌うプログラムのポイントを尋ねてみるとーー。「僕にとっては毎回異なるプログラムにすることが重要。東京では2回ステージがあり会場も異なる。それぞれ違う曲を入れることでどのステージも特別なものだと観客に感じてほしい。今回チャイコフスキー、ヴェルディ、プッチーニ、そしてフランス・オペラからのアリアを選んだのは僕の声に合っていて、かつ僕の声で物語を伝えるのに最適な作品だからなんだ。僕が舞台でアリアを歌う時、観客をロマン主義の旅に誘いたいと思っている。今回の選曲はどれもロマンティックかつ叙情的で、若いヒーローたちが自身の物語を語っているんだ」 それらレパートリーの中で特に重要な作品は?という質問には「それはとても難しい質問だね。例えば『マノン』、『ウェルテル』、『ホフマン物語』、『ロメオとジュリエット』から1作品選んでと言われても僕には選べない」ときっぱり。その理由を尋ねると「僕は世界にフランスの作品を伝えていくこと、フランス・オペラの歌唱スタイルを「輸出」することが僕の義務だと思っている。フランスの文化は世界中で愛されている。皆に愛されているイタリア・オペラだけではなく、僕はフランス・オペラを伝えていきたい。パリは長く芸術の中心地であり、かつてはどの作曲家もパリでの成功なくして大成することはできなかった。フランス文化が世界中で今も愛されているからこそ、僕はフランス・オペラの魅力を伝えていきたい!」