なぜ欧州サッカーの舞台で日本人主将が求められるのか? 酒井高徳、長谷部誠、遠藤航が体現する新時代のリーダー像
ドイツ・ブンデスリーガでは3人もの日本人選手がキャプテンマークを巻いてプレーしている。酒井高徳は2016年から2018年にかけて名門ハンブルガーSVの主将の重積を担った。チームが2部降格の危機に陥ったタイミングでの新主将就任は当時現地メディアでも大きく取り上げられ、酒井はその難しい役回りを十二分に全うした。現日本代表キャプテンの遠藤航はシュトゥットガルトで2021年から2023年まで主将を務め、元日本代表主将で17シーズンにわたってドイツの地でプレーする長谷部誠もたびたび腕章を巻いてプレーしている。彼らは果たしてどのような評価を受けて、欧州の地でキャプテンを任される存在となったのか? (文=中野吉之伴、写真=picture alliance/アフロ)
新しいキャプテン像と日本人選手の気質がマッチする時代
10年ほど前では考えられないことだが、ここ数年、欧州サッカー界でキャプテンを務める日本人選手が少しずつ出てきている。一昔前ではキャプテンといえば、カリスマ性が高く、全身から闘争心があふれ出て、大きな声とジェスチャーでチームを鼓舞する姿ばかりが求められていたものだ。 だが、時代の変化や選手構成のグローバル化に伴い、キャプテンに求められる能力も変わってきている。チームと監督・コーチをつなぐ存在として、プレーパフォーマンスはもちろんのこと、プロフェッショナルな姿勢で模範的な立ち振る舞いをし、トレーニングから監督やコーチの意向を適切に解釈したうえでどんな時でも手を抜かず戦う姿をみせる選手に、クラブもファンも信頼を寄せる。そうした新しいキャプテン像と日本人選手の気質がマッチするようになってきているようだ。 日本人選手でキャプテンといえばやはりまず長谷部誠だろう。フランクフルトでは長年アルゼンチンDFダビド・アブラハムが主将を務めていた。どちらかというと闘将タイプ。そんなアブラハムが現役引退を決意し、退団した後、元ドイツ代表MFゼバスティアン・ローデと長谷部の2人に白羽の矢が立ったのだった。 2018~2021年にフランクフルトで監督を勤めていたアディ・ヒュッターはその後ローデをキャプテンに任命し、長谷部は副キャプテンに。ただ負傷離脱することが度々あったローデに代わり、キャプテンマークを巻くことが少なくはなかった。 ヒュッターも長谷部には「心構えやクオリティが素晴らしい。若い選手はマコトから多くのことを学んでいると思う。マコトと一緒にプレーできることは非常に大きい。プロとしてどうあるべきかを学べる対象としてマコト以上の選手はいない。素晴らしい人間で、素晴らしい選手で、チームプレーヤーだ」と全幅の信頼を寄せていたものだ。